全然知らない作品でした。早川書房創立80周年読書会に感謝です。読んで、すさまじい衝撃を受けました。SFはたまに手に取るのですが、とんでもない作品に当たるジャンルなんですよね。解説によると、歴史的なSFの名作とのことですが、なぜこれほどの作品にこれまで気がつかなかったのか不思議でなりません。
作者はポーランド人です。当時は東側で、ロシアの検閲があったため、以前の翻訳は削除部分が結構あるらしいのです。それでも、ポーランド語圏は多少ゆるかったそうですが、この作品の古い版もそれなりにカットされています。本版は、ポーランド語からの直接の完訳版となっています。
SF作品といえば、星間戦争や、未来技術のメカ重視もの、ディストピアなどに加え、新生命体との遭遇があります。裏表紙の紹介では、惑星ソラリスは意思をもった海に表面を覆われていて、惑星の謎の解明のため主人公のケルヴィンが送り込まれたと書いてあります。意志を持った海。新生命体ですね。
わたしが強い衝撃を受けたのが、まさに新生命体とのコンタクトの建付けなのです。設定というよりも、物語のロジックであり、いったんこの考え方に触れると、なぜこれまでのSFはこんなにも当然の展開にならなかったのだろうという納得感があったのです。
宇宙でもし生命体に出会ったらどうしますか? まあ、コンタクトを取り、意思の疎通を図ろうとするでしょうね。これまでのSFと同じです。問題は、どこまで確からしく展開するかなんですね。そもそも、地球上ですら言葉が違ったら意思疎通はかなり困難です。知識レベルが同じで、体の作りも同等の生き物同士であってもです。それであれば、新生命体との意思相通なんて簡単にできるわけがないですよね? 犬や熊とでもかなり困難で、アメーバと意思疎通できる気がしますか? 努力はするけれど、無理なものは無理。つまり、徹底的にご都合主義を排した、冷徹な緊張感のある作品なんですね。途中で、ホラーSFではないかとすら思うくらい、容赦のない描写がちらほら入ってくるのです。そして、それこそが最大の魅力なのです。
なぜエヴァンゲリオンを連想したかというと、意思を持った海の登場や、ドグマ(教義)という用語遣い、そして母なる海が生み出すという考え方に、共通点を感じたからなのです。綾波レイはどこから来ましたか? どうやって生まれましたか? どんな生き物ですか? 人類と言っていいのですか? でも、使徒は人類とコンタクトを取ろうとしているように見えますよね。その結果、どうなりましたか?
ソラリスで受けた重要な部分が、エヴァンゲリオンの中枢のメカニズムに似ているからこそ、世の中でエヴァショックがあった理由は想像がつきます。わたしはエヴァを深夜の再放送で見てエヴァショックを一人で味わったので、ちょっと皆さんとは違う気がしますが。
著者のレムは鬼才といってもいいかもしれません。すさまじい作品に当たりました。
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