本書は仏文学者、翻訳者の著者が、過去の面影が残るパリの街を歩き、昔のパリの風情などを紹介するという本です。
様々な着眼点からパリを歩くのですが、私自身、パリに行ったこともなければさほど詳しいというわけでもなかったので、「へぇ~」的な興味を持ちつつ読むことができました。
まず、パリという街は城壁に囲まれた都市だったのだということを教えられました。あまりパリと城壁というのがピンと来なかったのですが、各所に昔の城壁跡が残っているのですね。そして、昔のパリというのは案外狭い区画でもあったのだということを教えられました。
また、パリはパサージュが多く作られた街だったということ。これも私が知らなかったというだけなのですが、パサージュ、つまりアーケード商店街ですが、パリとパサージュというのはあまりイメージしていなかった点でした。
本書には多数の写真、図版が添えられているのですが(モノクロで少々見づらいのが残念ですが)、昔描かれたパリのパサージュとほとんど変わらずに残っている場所もあるのですね。
パリには現在30本位のパサージュが残っているそうですが、往時には183本ものパサージュがあったのだとか。また、添えられている写真などを見ると、日本のアーケード街とは趣が異なるようです。
日本のアーケード街って、普通にある商店街に屋根をかけたという感じがしませんか?
でも、パリのパサージュって(あくまでも本書の写真等で見る限りはということですが)建物内の通路の両側に商店が作られているとか、建物と建物の間の小さな路地に屋根がかけられているとか、そんな印象を持ったのです。
昔のガイドブックを繙いてみるなんていうこともしています。そうか~、鴨料理で有名なトゥール・ダルジャンは昔はホテルで、鴨料理が有名になるのは20世紀に入ってからなんだ~。
写真館の紹介もあるのですが、そこでランボーの肖像写真も紹介されています。ほとんど同じ時期に撮影されたという二枚の肖像写真を並べて見せてくれるのですが、これがかなり面立ちが変わって見えるんですよ~。ほぼ同じ頃に撮影されたものだというのに印象がまったく異なります。
あるいは公衆トイレ事情についても触れられています。あまりきれいじゃない公衆トイレも結構あったそうであります。どうもパリという街は公衆トイレを目につかないような場所に設置する傾向があるようで、施設内のトイレも妙に分かりにくい場所に置かれているんですって。
さらに、これは面白いアイディアと思ったのは、セーヌ河沿いに設けられているという『印象派の散歩道』というハイキングコース。印象派の画家たちは、パリの街を描いた絵を沢山のこしているのですが、それらの絵が描かれたまさにその場所に、その絵の複製を展示して、実際の風景と見比べられるようにしている散歩道が作られているんですね~。
風景の一部が絵に描き取られているようにも見え、これは面白いな~と感じました。
このようなパリ案内の合間、合間に、さすがに仏文学者らしく、ゾラ、モーパッサン、ランボー、プルーストその他、それぞれの場所にちなんだ作家、詩人らの作品紹介が挟まるという構成で、ちょっとした文学散歩的な趣もある本になっています。
普通のパリ観光ガイドとはひと味違うパリの姿を読み取れる本ではないでしょうか。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)/252ページ:2026/04/11
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