『ラーメンと瞑想』 宇野常寛著を読む。
『ラーメンと瞑想』って相反するものなのではないか。すると、著者曰く「ラーメンとは獣の世界との接続である。瞑想とは神の世界との接続である。」「解剖台のミシンと傘の偶然の出会いのように美しい」というロートレアモンのフレーズのようだが。また、こんなことも。「僕がラーメンを愛しているのは、それが孤独を強いる食べ物だからだ」
話は著者と知り合いの編集者がいろんなところで瞑想して、そのそばにある飲食店を訪ねるスタイル。
神から獣へ。聖から俗へ。ハレからケへ。二人のやりとりが知的だったり、痴的だったり。
いつもなら社会や思想や哲学など世相・風俗を評論するのだが、その対象を食にしている。
出て来る店が「ラーメン富士丸、しんぱち食堂、PARIYA AOYAMA、武蔵野アブラ學会、大船軒、CHATTY CHATTY、はま寿司、ひまわり、とん太、松石、野方ホープ」。ラーメン、焼き魚定食、回転ずし、とんかつ。ミシュランとは無縁の人気店。
以下雑感。
〇著者の食へのトラウマは高校時代の寮の食事。先輩にあがた森魚のいる函館のミッションスクールだと思うが。食べ盛り世代向けにやたら量はあったが、とにかくまずかったと。最近の学生寮は食事がうまくなったと聞いたことがあるが。
〇意外にもアウトドア派だった。書斎の人だと勝手に思い込んでいた。相方は飲むが、著者は飲まない。
〇父親が山形県出身で河北町谷地のつったい肉そば(冷たい鶏肉そば)が出て来る。妻が山形出身なので帰省すると食べに行った。夏に食べると最高。東京にもあるが、現地で食うのがいちばんだと思う。
〇二郎系ラーメンのラーメン富士丸。ラーメンの盛りの描写を読むだけで、お腹が苦しくなる。
〇新宿御苑から『オッペンハイマー』を見て、CHATTY CHATTYへ。エルビス・バーガーをオーダーする。肉に、ピーナッツバター・ベーコン・バナナをサンドしたプレスリーが好きだったバーガー。これもすさまじいボリューム。拷問の一種・食攻めになりそうな。『オッペンハイマー』とエルビス・バーガーの共通点とは。
〇大好きな立ち食いそばや店事情も、くわしく。立ち食いそば愛を感じる。そばなら行けるし、完食もできるだろう。
単なる食のガイドブックではなくて、そこに、思想がからむ。
この内容でまんま30分のTV番組になる。主人公は30代の文筆家と40代の編集者。彼は瞑想の達人。前半15分は瞑想スポットと瞑想方法の紹介。後半15分はお店と料理紹介。取材NGの店はその界隈と二人の食レポ風対話で。冒頭のナレーションはもちろん「都市にはラーメンを食べて死ぬ自由があり、瞑想するための場所がある。」
『庭の話』宇野常寛著
『ゼロ年代の想像力』宇野常寛著
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