ミルハウザー好きなんですよね~。
『マーティン・ドレスラーの夢』、
『ナイフ投げ師』その他、短編集も、アンソロジーに採られた作品も、ミルハウザーを見つけると喜んで読んできました。
本書は不覚にも見落としていた作品で、図書館蔵書で見つけて「あわわ」と借りてきました。
短編集なんですが、少しだけ作品をご紹介しましょう。
○ お電話ありがとうございます
カスタマー・サービスに電話をかけている主婦。まったくつながらず、電話からは「お電話いただき誠にありがとうございます。もうしばらくお待ちください。」みたいなテープが延々流されているだけ。
主婦はややキレ気味になりながら、おそらくこれ、電話に向かって独り言で話しているんだろうなぁ(決して脳内だけで考えているんじゃなくて)。その独り言はどんどんセキララなものに……。
○ 斬首刑のあとで
凶悪犯罪が多発していた街は、こういう犯罪を犯す不届き者に知らしめてやろうということから、遂にギロチンによる死刑を導入するのです。
街にはでかいギロチンが設置され、それによる公開処刑も行われました。
住民は見物に来る者もいれば忌避する者も。また、子供はさすがに……ということで家に残して親だけで見に来る者もいますし、子供にもちゃんと見せるべきだということで子連れでやってくる者もいました。
もちろんこういうのに反対という人たちもいるんですよ。
さて、実際に公開処刑が行われてみると……。
○ 梯子たちの夏
この町では、冬が終わると(家のメンテナンス等のために)あちこちで家に梯子がかけられるのが風物詩でした。今年もまたそんな季節が訪れ、色んな家で梯子がかけられるようになりました。
ところが……。どうしたことか、今年はみんな高い梯子を競ってかけ始めるのです。
主人公もこれに刺激されて、スライド式のでかい梯子を購入したりして。
でも……。やっぱり事故が起きちゃうんですよね~。中には梯子から転落して命を落とす人も。でも何故か人々の梯子熱は収まらないのです。
○ 影劇場
ある町で、『影劇場』なるものが大流行しました。まあ、人形を使った影絵のような出し物なんですが、何故か人々はこれにハマってしまい、劇場は大盛況。
もちろん、こうなると模倣する者も現れ、『虹劇場』なるものも登場します。これは『影劇場』が必然的に白黒なのに対して、色をつけた影絵芝居のようなものでした。
人々は、最初は物珍しさもあって、『虹劇場』にも行ってみるのですが、しばらくするとモノクロの方がやはり良いと感じたのか、『影劇場』に戻っていき、『虹劇場』は閉館してしまうのです。
人々はさらに自分たちでも影芝居を始め出したりもするのです。
○ 彼は取る、彼女は取る
「彼は皿立てを取り、彼女は帽子掛けを取り、彼はテーブルを取り、彼女は椅子を取り……」と延々と続く短い作品です。
これ、どういう作品なの? と分からなかったのですが、巻末解説を読むと、これは離婚調停で、どちらが何を取るかを延々やっている場面なのだとか。それを知って笑った!
という感じで、『斬首刑のあとで』、『梯子たちの夏』、『影劇場』などはいかにもミルハウザーらしい、これまでの路線を踏襲している作品と感じましたが、『お電話ありがとうございます』や『彼は取る、彼女は取る』などは新機軸と言いましょうか、かなり斬新な試みの作品と読めました。
表題作の『高校のカフカ、一九五九』(これはカフカという少年の高校時代の様子を淡々と描いていく作品です)は、ちょっと微妙。この淡々と書き続けるところはこれまでとはちょっと違うとも感じる一方で、書かれていることはやはりミルハウザーを感じるものなんですよね~。
ミルハウザーが好きという方には文句なしにお勧めできます。
読了時間メーター
□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)/192ページ:2026/03/02
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