猫を主人公にした小説を書いてブレークした大山さんが、今度は犬を主人公にした小説に挑戦。シリーズ化必至の本である。
犬小屋を意味する老人ホーム「ニーシャシャン」。入居者は人間社会から見捨てられ、殺処分寸前の犬たちと、同居することが入所の条件。そこに入所しているのは、出所したばかりの元ヤクザ、余命短い病人、ゴミ屋敷の老女などワケありの人ばかり。そんな人たちが虐げられていた犬と同居しながら、互いに心を交わして、人間らしい生活を取り戻してゆく過程を描く。5つの感動作品が収録されてい
る。
英理人は、先輩岸さんとともに、「ニーシャシャン」で夜10時からホームの食堂、その後、男女別の入浴施設などの清掃をしている。岸さんは、掃除について何の指導も説明もしない。英理人が至らないところがあれば黙って岸さんが清掃しなおす。食堂にはピアノがあり、このピアノの傍らにはいつも施設の犬「弦」が座っていた。
弦は入居者の老婦人京子さんが世話する犬だった。散歩や食事は、京子さんと一緒にするが、それが終われば、一目散にピアノの横に走って佇む。ピアノは鍵盤が象牙で作られた最高級品。
英理人は、母親の教育方針で幼い頃からピアノを習わされた。才能があったのか演奏の腕はめきめき上がり、全国コンクールでずっと優勝を獲得した。しかし大学になるとライバルが登場。するとどんな大会でも彼が優勝し、英理人は全く勝てなくなった。明らかに技量は英理人に劣り、時には音程をはずすのに。聞くと、彼は建築科の生徒で、音楽とは関係なく建築士を目指しているという。しかもピアノは高校から習いだしたとのこと。英理人はこれにショックを受け、演奏家を断念して、今の老人ホームで働きだす。
ある日、食堂で夕食生姜焼き定食を注文、それを待っている間に、英理人が施設のピアノで「子犬のワルツ」を弾く。その演奏が終わると、食事していた人たちが立ち上がって「ブラボー」と歓声をあげる。
岸さんがやってきて、ピアノを教えてくれって言う。それに続いて施設の人たちが同じようにピアノを教えてくれと言い出す。そして時々、英理人の演奏会もある。
技術ではなく、心を込めて懸命にピアノを弾く。その間に佇んでいる犬の同居人の婦人が亡くなってしまう。それで、犬の世話は英理人が行うようになる。
いつも、犬はどこへでも英理人は犬と一緒。犬の名前は弦なので、英理人はみんなに「弦パパ」と呼ばれている。
収録されている「ピアノ犬」という作品より。この作品が一番印象に残った。
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