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二人の少年は、カヌーのハヤ号を操り、美しい夏のセイ川を上りくだりする。四百年前に隠された宝を発見するために。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!免許皆伝
ハヤ号セイ川をいく
物語の主人公である二人の少年デイヴィッドとアダムが暮らす、セイ川沿岸のリトル・バーリー村、グレート・バーリー村は、ロンドン近郊の田園地帯リトル・シェルフォード、グレート・シェルフォードがモデルで、作者フィリパ・ピアスの生まれ故郷だ。


少年たちは、カヌーのハヤ号を操り、セイ川を上り下りする。四百年前にアダムの先祖が隠した宝を、この夏休みのうちに探し出そうとしている。
代々の当主たちが探し続けてきたのにみつからなかった宝を、現代の二人の少年に、みつけられるのだろうか。


過去の宝が隠された事情やその後のドラマにどきどきする。
手がかりは、遺された文書、詩、肖像画。実際の土地。
ミステリアスなパズルのピースをどのように読み解き、結び付けていくのか。
二転三転、何度も戻る「ふりだし」
親し気な顔をして近づいてくる敵、期限切れは間近に迫るし、先へ行くほど状況は緊迫する。
読むスピードはどんどんあがる。


アダムは幼い頃に両親を亡くし、認知症の祖父の世話をする叔母と一緒に暮らしていたが、家計逼迫のため、彼は秋からバーミンガムの親戚に引き取られることになっている。もし、宝が見つかればここに残ることができると彼は思っている。
デイヴィッドがアダムと一緒に宝を探すのは、アダムをよそにやりたくないからだ。
それぞれ、癖もあるけれど、基本的に思いやりのある素直な子どもたちだ。


子どもたちの周りの大人たち(家族や近所の人たち)の姿がリアルで、言葉やしぐさの端々に、それぞれの人生を彷彿とさせられ、ふくらみを感じた。
深刻な話、社会問題にもなりそうな事情が、控えめだけれど、ちゃんと書かれている。


力を合わせて二人、パドルを操りカヌーを進める。二人の思いに答えて進むハヤ号も三人目の友だち、一緒に冒険することを喜んでいるよう。


夏の田園風景の美しさ、それを涼やかな川の上から味わう喜び。読み手はたちまちセイ川とその流域の魅力の虜になる。
アダムのこの地を離れたくない気もちがよくわかる。それは、作者の思いでもあるのだろう。
いつまでも、二人とハヤ号との冒険を読み続けていたかった。


エドワード・アーディゾーニの挿絵が素晴らしいが、ありがたかったのは、巻末に載っている近隣の絵地図。アーディゾーニに私淑したというYukina Tokumotoさんによる美しい絵地図を、読書中、何度もひっくり返して見返した。



岩波少年文庫100冊マラソン、100冊達成しました。
宝を掘り進めるように次に読む本を探した15か月、楽しい冒険をしているようでした。
大好きなフィリパ・ピアスの『ハヤ号セイ川をいく』の新訳が出ると知って、これを100冊目にしようと決めていました。
はじめの一冊めがフィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』、締めくくりの100冊目もフィリパ・ピアス、よい記念になりました。






  • 掲載日:2026/04/17
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この書評へのコメント

  1. ぷるーと2026-04-17 12:53

    ぱせりさん、100冊達成おめでとうございます。

    重なっていない本も多いので、いつかぱせりさんの100冊を読了したいと思います。100冊マラソン、本当に楽しかったですよね☆

  2. ぱせり2026-04-17 14:43

    ぷるーとさん、ありがとうございます。おかげさまでマラソン完走できました。
    100冊マラソン、ほんとうに楽しかったです。達成できたことはうれしいけれど、終わってしまってちょっと寂しいです。
    そうなんですよね、ぷるーとさんの、重なっていない本、わたしも気になっています。これから先もゆっくりと岩波少年文庫、読んでいこうと思います。まだまだゆるゆる走りたいです。ご一緒できてうれしかったです(^^)

  3. サワコウ2026-04-17 22:23

    100冊完走、おめでとうございます!
    フィリパ・ピアスはデザイン学校の頃絵本の講義の時間に読んで、それから岩波少年文庫にもハマりました。でも有名どころしか読んでいない。100冊はすごいです!

  4. ぱせり2026-04-18 01:46

    サワコウさん、ありがとうございます。こんなに続けて岩波少年文庫を読んだのは初めてで、少年文庫の良さを改めて確認してしまいました。いいですよね、少年文庫♪

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