鳥井一樹は、防犯カメラの営業マン。完璧な会話術で相手の心を掴み、一度ターゲットにしたら幾つもの契約を結ばせてしまう。成績は、常にNo.1。
だが、トップになっても、鳥井が感じるのは虚しさだけ。努力して会話術を身につけ、相手の心理を読み、思うように話を進めることができるようになった。成績がトップになる。表彰され報奨金が出る。そこで何かが心に響くとか晴れやかな気分になるとかあるのではないかと期待しても、感じるのは虚しさだけなのだ。あまりにも長くトップでい続けると会社で浮いてしまうので、何度か転職、新たな会社でもすぐにトップになるのだが、そこでも気分は晴れない。
今の防犯カメラの会社も居心地が悪くなってきた。そろそろ転職するかと考え始めていた頃、メールで夜中の11時に来てほしいとの依頼があった。そんな無茶な依頼を引き受けられるのは、もちろん鳥井しかいない。行ってみると、最初は玄関先で難癖つけられ、大きな物音がしたあと家の中に連れて行かれた。そこには、男の死体が。あろうことか、鳥井は強盗殺人現場に来あわせてしまったのだ。
見たからには殺す、と犯人に詰め寄られる中、鳥井は犯人たちの会話の断片から彼らが置かれている状況を素早く分析し、持ち前の口八丁で自分を雇ってほしいと売り込む。
奇抜な設定ながら、ついつい釣り込まれて読んでしまう。殺し屋稼業と営業をくっつけるなんてちょっと思いつかないよね。理詰めでストイックな鳥井だからこその展開だが、なかなかすごい変貌ぶりだ。
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