『構造と美文 山尾悠子偏愛アンソロジー』山尾悠子編を読む。
著者が影響を受けた、感化された短篇小説や詩を編んだ。それは文体もあるが、枠組みもある。高名なシェフが秘伝のレシピを打ち明けるようなもの。で、刺激的で耽美的な何篇かを。
『バベルの図書館』J・L・ボルヘス著、鼓直訳
何回読んでも圧倒される。図書館をヒトの脳のメタファーかと思うのは短絡的か。
『時間の庭』J・G・バラード著、宇野利泰訳
『結晶世界』にもつながる無機的な美しさ。
『アウトサイダー』H・P・ラヴクラフト著、平井呈一訳
古城に引きこもっていた男が突然、外へ出る。男目線での展開がスピーディー。ドッペルゲンガーもしくはゾンビと思うのは短絡的か。平井訳、名調子!
『血まみれマリー』金井美恵子著
『兎』の中の一篇。大学生のときに、おそらく読んでいたはずだが見事に覚えていなかった。最高のダークメルヘン。いやはや、まいりました。メルヘンの残酷さと人の業の悲しさ。『兎』、開かずの段ボールにあったかな。
『壮麗館』アルベルト・モラヴィア著、竹山博英訳
モラヴィアで好きなのは長篇なら『軽蔑』、『倦怠』。短編なら『ローマ物語』なんだけど。
『落ちる娘』ディーノ・ブッツァーティ著、柴田元幸訳
非行少女でなく飛行処女。つーか、落下少女か。落ちる、みな、落ちる。婆さんまで。ブッツァーティも読まないと。
『冥府燦爛』塚本邦雄著
森茉莉の小説の登場人物の名前に驚いたが、負けないくらいの名前。妖しい店が並んだ射干(ひあふぎ)町地下街を歩く二人の男性。ここに出て来るブティックや酒場などの漢字系ネーミングの凝っていること。高尚なこと。キラキラネームを見たら作者はどう思うのだろう。夜の地下街はこの世の冥府。暖色系ならぬ男色系(過去レビュー『紺青のわかれ』塚本邦雄著より)。
『奪われた家』フリオ・コルタサル著、木村榮一訳
「曽祖父母の代」から住んでいる古くて大きな家。いまは「四十代」になった兄と妹が静かに暮らしている。その家がなにものかによって、どんどんスペースを奪われる。そこには大切なものや思い出のつまったものもある。なにものかはわからないが、危険を感じて兄妹は、長年住み慣れた家から脱出する。短い話でオチもないが、読み終えてから怖さがひろがる(過去レビュー『奪われた家/天国の扉』コルサタル著より)。コルタサル。好きな作家。『石蹴り遊び』を読みますぜ。
『中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃』三島由紀夫著
殺人鬼の殺人日記。つーかゴシックモダンホラーじゃね。いま読んでも魅力的な日記体小説。
『第九の欠落を含む十の詩篇』高橋睦郎著
難解な詩だという印象が強かったが、このラインアップだと、そうでもない。散文の奥にある深遠な世界。
『増補 夢の遠近法 -初期作品選-』山尾悠子著
『初夏ものがたり』山尾悠子著
『仮面物語-或は鏡の王国の記-』山尾悠子著
『迷宮遊覧飛行』山尾悠子著
『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子著
『飛ぶ孔雀』山尾悠子著
『山尾悠子作品集成』山尾悠子著
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