ブッツァーティの「古森の秘密」を読んだばかりだが、今回取り上げるのはその森の樹木が成長するのに欠かせない菌根菌の世界を描いた本だ。
菌根菌とは様々な菌類(黴やキノコ類)で、植物の根の中に侵入して、植物から糖分などの栄養分を得る代わりに、植物に土壌中のリン、窒素、カリウムの植物の成長に欠かせない成分を与えて、植物と相利共生の関係にある菌類だ。キノコ類では枯れた木ではなくて生きた松の木と共生するマツタケが良く知られた菌根菌だ。こういったキノコを外生菌根菌と呼ぶらしい。
成長に必須の養分でも特に土壌中のリンは土壌に強く結合しているので、植物の根から離れた土壌中のリンは菌根菌がなければ利用できない。菌根菌が根から離れた場所の養分を植物まで運ぶ役割を果たしている。
松の苗は土に菌根菌がないと発芽しても苗が成長できずに一年以内に枯れてしまうとか。野菜などの草本類でも菌根菌がないと成長が遅いことが確かめられているとか。ラン類などはラン菌がないと発芽も出来ないとか。多くの植物が菌根菌に頼って生きているらしい。
松茸の菌はマツ科やブナ科の限られた植物としか共生しないが、約4億年前に植物(コケ類)が水中から地表に進出するのと同時に誕生したらしいアーバスキュラー菌根菌は地上のほぼ8割の植物と共生できるという。本の表紙の写真はそのアーバスチュラー菌根菌の胞子で、直径は1ミクロンと比較的大きい。しかしこの菌の生活史は実はまだよく解っていないとか。
ラン類は草本類の進化の最後に現れたグループで、種はホコリ並みに細かく、発芽の栄養となる胚乳がない。種を軽量化して風により遠くまで飛ばす戦略だが、その結果、ラン菌と共生しないと発芽できなくなった。
ランの系統の中には、進化の過程で一旦ラン菌との共生を止めた後に、樹木につく外生菌根菌と共生するようになったものがある。こういったランでは樹木と菌根菌とランが三者で共生関係を作っている。またランの中には葉も葉緑素も無くして菌根菌から栄養をもらって生活している腐生ランも誕生した。(ギンリョウソウのような腐生植物と似ているがこれらはともに「菌従属栄養植物」と呼ばれる。)
4億年前にコケやシダ類が地上に誕生したのと同時に生まれたのがアーバスキュラー菌根菌で、ジュラ紀の終わりに生まれたのが樹木に着く外生菌根菌、ラン菌はもっと新しいらしい。地上での植物の進化は地下での菌根菌類の進化とともにあったと言えるのかも。
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