地震で飼い主から離れてしまった子犬が、高校の敷地内に放置された。そこから、この犬と生徒たちとの日々が始まる。
昭和63年9月、三重県四日市市の八稜高校の敷地内に真っ白な子犬が放置されていた。子犬を見つけた美術部員たちは、迷い犬のポスターを近隣各所に貼ったが飼い主は現れなかった。美術部員たちは高校内でこの犬を飼えないかと学校側に提案、コウシローと名付けられた犬の世話をする「コウシローの会」ができた。
本作は、「コウシローの会」初代から3年おきに、八稜高校生の高校生活が5話描かれている。
八稜高校は進学校なので、高校生たちは進学に関する悩みや問題を抱えている。地元の大学にするか東京の大学にするか。家庭環境の悩みとそこから派生する大学の学費の問題。そんな悩みを抱えながらも、同学年生に淡い恋心を抱いたり、趣味に没頭したり。さらに、第3話では阪神大震災で罹災した親族の悲しみや苦しみに直面した生徒も描かれている。
5つの話の中に、八稜高校で飼われることになった白い犬コウシローが登場する。コウシローは、生徒たちと会話ができるわけではないが、登場人物たちを引き合わせたり会話のきっかけになったりするだけでなく、彼らの心の内をさりげなく読んだりしている。そして、5話(1話から11年後)で、大好きだった人の傍らで眠るように命を閉じる。
この話には、悪人が出てこない。高校生たちの毎日は、悩みながらも輝いている。そのときには悩んでいた彼らも、あとになって、それがどんなに輝く幸福な日々だったかを改めて感じる。
そんな彼らのキラキラした日々を見せてもらえて、本当に良かった。
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