朝倉雛子は26歳。新卒で就職し損ねて事務系の派遣社員で働くうち、一念発起し、合格率一割以下の社労士の勉強に励み、その甲斐あって、3度目の試験で合格した。それでも就職は楽ではなく、いくつか断られた末、たった4人が働くやまだ社労士事務所に拾われたのは合格から半年も経った、大学卒業から5度目の春だった。
部署異動後勤務態度が悪くなった社員が辞職することになったのは、自己都合なのか。妊婦が出産後も働ける制度の整っていない会社での意識改革はどうなるか、苦労人のひよっこ社労士が中小企業の様々な労働問題に挑む。
中小企業に勤めていた。平成の頭で週40時間なんて夢のまた夢。平日の残業代は無く、会社からカギを借りて土日もサービス残業。今考えるとブラックな働き方だったとは思う。しかし、実際はそんなことなくても、俺が抜けたら会社が潰れるかもしれん、という使命感があった。出張から帰って仕事が溜まっているのを見るのは必要とされているようで嬉しかった。社畜といっていいだろう。
本書の第一話「五度目の春のヒヨコ」の初出が2013年とある。平成の終わりで、法律も大きく変わっているから中小企業の意識も雲泥の差があるとは思う。
この作品の巧さは主人公自身が零細企業の駆け出し社労士であるということ。社労士は「おおざっぱに言うと会社の総務のお手伝い」であるから、労働者より雇用する側に立たないといけない。さらに、雛子の正社員経験の少なさから、理解が遅れる部分も出てくるということ。
はじめは「26にもなってこんな人いるかなぁ」と懐疑的に読んでいたが、人の躓きはそれぞれ違う。私がリアルさを感じなくても、他の人はそうでなないかもしれない。
各話の当事者の行動が謎を生み出し、新米労務士が法律を後ろ盾にその謎に挑むので、お仕事小説であり、推理の要素もある。
就職がかなわずバイトを続けるしかなかったり、やる気搾取・パワハラなどの問題もある。三次産業で働く全ての人がどこかしら、何かしら共感を得られるだろう小説だと感じた。
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