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息子によるサーカス・クロニクル二次創作

カーラの選択
♠️ジョン・ル・カレの生み出したスパイ、ジョージ・スマイリーは世界的に愛されるキャラクターの一人だ。2024年に息子のニック・ハーカウェイがそのスマイリーを宿敵カーラと共に蘇らせ話題になった。


♥️1963年の春、ジョージ・スマイリーは、引退しケンブリッジ・サーカスを去る。しかし、コントロールはスマイリーを呼び戻す。
ロシア人工作員がロンドンに住むターゲットを暗殺しようとする。しかし、ターゲットは不在で、天啓により亡命を決意する。彼がロンドンで暗殺するよう命じられていた男は、ハンガリーからの亡命者で出版経営者ラースロー・バーナーティ。しかし、本当の顔はソ連のスパイ、ローカ・フェレンツだった。いくつもの作戦に従事した英雄は、祖国ハンガリーの共産党政府の要職につくもある時、不興を買い追放されていた。彼はなぜ追い出され、モスクワから狙わているのか? 
スマイリーはローカをたどりドイツ、オーストラリア、そしてハンガリーへと鉄のカーテンの向こう側へと旅立つ。



♦️さすがに長くル・カレに接していただけある。二次創作といえど引き込まれた。ケンブリッジ・サーカスや協力者の面々の活躍をこうして読めるのが、嬉しい。ジム・プリドー、ピーター・ギラム、コニー・サックス、トビー・エスタヘイス、オリヴァー・メンデルなどなど、名前だけの存在だったスティード=アスプレイ(スマイリーの妻アンはアスプレイの秘書だった)まで出てくる。


ハーカウェイの作風を知っているからなおさら感心した。通常運転のニック・ハーカウェイならばクスリでキメたジョージ・スマイリー(「レオン」のゲイリー・オールドマン風)と眼帯巻いたビル・ヘイドン(「キングスマン」のコリン・ファース風)がキレッキレのガン・アクションを饒舌に描く(はずだ)。
しかし本書ではハーカウェイは自分を押し殺し、かつて村上春樹が「ぐしゃぐしゃ性」と評したあのル・カレの文章を模倣、スパイたちの韜晦した世界を描く。あえていえば、スマイリーがカーアクションに巻き込まれる展開はハーカウェイっぽい。


ひと言でいえば『スマイリーと仲間たち』失敗バージョン。カーラを子供の頃から可愛がり、命も助け、薫陶を与えた大恩人を押さえないスマイリーの詰めの甘さが失敗を招く。この大恩人の素性がある意味、衝撃だ。カーラは恩人と言えども、自分の弱みと成り得るものを片っ端から消していく。しかし、どうしても消せないものがあり・・・となる訳だ。
逆に言えばこの失敗があったから『スマイリーと仲間たち』では、成功したと受け取れるようになっている。上手い。



♣️2026年は新作を発表予定とのこと。タイトルは"The Taper Man"。1965年のアメリカを舞台にソ連のスパイ網を追う、そして『ティンカー』で上級職員の一人だったロイ・ブランドが活躍する物語だそうだ。
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  • 掲載日:2026/05/23
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