読み直しであります。初読は図書館から借りた単行本。とても面白く、手持ち本に是非欲しいと思ったので文庫を買っていたのですが、それを読み直してみました(いや、ちょっとタイミングを計り間違え、図書館から借りてきた本を全部読んじゃって読む本がなくなっちゃったのよ~)。
さて、物語の舞台となるのは18世紀のロンドン。外科医のダニエル・バートン医師は5人の弟子と共に死体解剖に励んでおります。
この時代の英国は、宗教観もあって死体解剖はなかなか認められなかったのです。しかし、医学の発展のためには是非とも必要! 公に認められる死刑囚の死体などではとても数が足りません。そこで、熱意溢れる医師たちは死体盗掘をしてくる者に金を払ってでも死体を入手し、密かに解剖していたのでした。
今日解剖するのはことのほか貴重な6ヶ月の妊婦です。ダニエル医師にとっては死体の身元など知ったことか! なのでありますよ。
ところが、この死体、男爵家ご令嬢だったから警察も放ってはおけない。当時整備されつつあったボウ・ストリート・ランナーズという捜査官を出動させてその消えた死体の行方を追っていました。
出動した二人の捜査官はダニエル医師の個人研究所に踏み込んで来たのです!
しかし、警戒おさおさ怠らない弟子たちはいち早く手入れを察知し、解剖にご執心のダニエル医師を死体から無理くり引き剥がし、死体をかねてより用意してあった暖炉内の隠し場所に突っ込んだのです!
捜査官は肝心の死体を発見できず、空手で帰らざるを得ませんでした。危うく難を逃れたダニエル医師たちは、さっそく解剖を再開しようとしたところ……あらら。
暖炉の隠し場所から別の死体が出てきたではないですか!
四肢を切断された若い男性の死体であります。
なんだこれは! 驚愕するダニエル医師。
いや、それだけではなく、死体がもう一体出てきたのです。こっちは顔が分からない程潰された男の死体。
どういうことだ……。
ということで、この謎の二死体は誰なのか? どうしてこんなところから死体が出てくるのか? という謎を追うミステリであります。
捜査の中心を担うのはジョン・フィールディング(実在の人物だそうですよ)という盲目の切れ者治安判事と、その姪でフィールディングの目となり活躍するアン=シャーリー・モアであります。
ミステリとしてもよく書けているのですが(ややフクザツ過ぎて整理が追いつかない感はありましたが)、それよりもこの時代のロンドンの風俗が実に活き活きと、よく書き込まれている傑作と感じました。歴史小説もお得意な皆川さんならではというところでしょうか。
初読時のレビューを読み返してみても、やはりミステリ部分よりも当時の死体解剖を巡る環境に興味を持って読んだようであります。
私、今回の読み直しでダニエル医師の姿が、以前読んだ
『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』に登場するジョン・ハンターとダブったんですよね~。これが似ているんですよ。と、思ったら、しっかり参考文献に同書が筆頭に上げられているではないですか。皆川さんもキャラ造形に参考にされたのでしょう。
また、この作品、非常に凝っていて、作中に弟子たちが歌う『解剖ソング』なるものが出てくるのですが、皆川さん、これAからZまで作詞しているばかりではなく、作曲までしてもらってその楽譜まで添付されているんですよ~(笑)。いやいや大したもんだ。
弟子たちのキャラも立っていますし、ユーモラスな味も添えられていて、大変よくできた作品だと改めて思いました。タイトルの『開かせていただき光栄です』もとってもしゃれていますよね。
そうそう、このタイトル(“dilated to meet you”)ですが、「お目にかかれて光栄です」(“delighted to meet you”)をもじったものだったんですね~(meetはmeatにしなくていいのかしらん? 文法的にはおかしいけどさ)。しっかり作中(文庫版94ページ)に書かれていました。初読時見落としていた~。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)/523ページ:2026/03/04
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