骨肉腫で余命幾許もない(万が一手術で治るとしても右腕を失いずっと頑張っていた彫刻が出来なくなる)彼氏・朗から別れを告げられた圭子。
そして巨大隕石かなんかが一週間後に地球にぶつかってお終い、というニュースが伝えられる。
滅ぶ前に、練馬から「あたしの為に」西鎌倉に居る朗に会いに行く圭子の物語と、途中出会う人達の物語。
一部で話題だった、世田谷の由利子の話がキツい。
グロじゃなくて妻の重たい独り善がりさが。
自分を偏執的に愛されるのも重たいけど、そうですらなくて自分の意思も示してくれない、ただ自分の理想に添わなければならないというのはしんどいよな・・・だからって他所の女に走るのもどうかと思うが。
もしかしたらこの世界で一番幸せだったのかもよ、由利子。
世界が滅ぶ、どう死ぬかも解らない恐怖より独り善がりに愛する夫を自分の中に入れる事に夢中で居られるのだから。
ああまで狂ってしまえるなら楽なのかもしれない。
他の人達もそれぞれ自分の事で精一杯、世界がどうなっちゃっても自分はこうありたい、って押し通していられるなら「しあわせ」なのかな。
究極の「自分の中だけで自分の一生が完結してんの」(p.330)だ。
ある意味、世界が終わろうがどうなろうが変わらない自分の一生を貫き通せる人達ばかりなのかもしれない、この物語で描かれるのは。
という色んな意味で読んでいてどんよりする物語だが、最後は妙に清々しい。
狂ってしまう事が出来なかった(けど読んでる側からしたら十分狂ってるような、愛する人にひとめ会う為に服とハイヒール持って行っちゃうんだから)。
だけど全うする事は出来た。
世界がどうなるのかは知らない、知らなくてよいのかもしれない。
ただ、圭子も朗も良かったな、と。
そう思える物語で良かった。
圭子の「まだまだいろんな絵を描きたかった」に対して朗が「おまえ自身が、その絵なんだよ」とと告げる(p.336)、我我は其の素晴らしい、美しい、きらきら光る絵を見せて貰えたんだな。
だから最後に清々しいと思えたのだ。
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