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休蔵さん
休蔵
レビュアー:
ぼんやり眺めるだけで楽しめる日本庭園も、基礎的な知識を有していると楽しみ方は多層となるはず。本書は、庭園についての基礎的な知識を得るにはもってこいの1冊。
日本各地に様々な庭園が存在する。
 ぼんやり眺めるもよし、水のせせらぎを聞くもよし、風を肌に感じるもよし。
 庭園の楽しみ方は人それぞれだろう。
 眺め方も建物に座す場合もあれば、散策しながらの場合もあろう。
 四季の変化を楽しむこともある。
 ふんわり飛んでくる鳥も、庭園に彩りを添える。
 ふらりと訪れても十分楽しめるのが庭園の良さではあるが、一定の知識を持つことで、その楽しみ方は重層化するに違いない。
 本書は、そんな期待に応える1冊だ。

 本書は大きく3つの章からなる。
 第1章は「神仏の庭と人間のにわ」で、各時代の庭園の特徴を簡潔にまとめている。
 飛鳥・奈良時代の発掘調査事例や神社の磐座から始まり、昭和時代の芸術的庭園まで順を追っている。
 
 第2章は「日本庭園の技術とこころ」で、庭園を構成する要素の各論である。
 日本庭園は自然を取り込んだり、再現したりすることを旨とする。
 植栽術、水工法、土の造形など、庭園の基本となる構成要素の意味を解説してくれて、庭園を散策する際に参考になる情報が満載である。
 現代人は新しいものに目が奪われがちとする。
 加えて、「時間の積み重なりの味わい=歴史の美」を楽しむことができるのも人間という。
 「庭園文化」は、時間とともに生長・変化・成熟する「空間文化」で、それを十二分に味わうためには、最低限の知識が必要で、本章が示す情報は重要なものと感じた。

 第3章は「日本の名庭三十六景」で、36か所の庭園を紹介している。
 個人的には4か所しか行ったことがなかった・・・
 なんとまあ恥ずかしいこと。
 せっかく日本国内に優美な庭園が数多く保護されているのに、ほとんど行ったことがないなんて。
 
 世界の庭園の歴史を著者はざっくりと示している。
 すなわち、国王や皇帝のための閉じられた「私庭園」(ガーデン)から、一般市民のための開かれた「公園」(パブリック・パーク)と変遷し、さらに「緑の都市」(アメニティ・タウン)作りを目指す「ランドスケープ・アーキテクチュア」へと展開したという。
 そして、「ガーデニング」から「ファーミング」への展開が予測された。
 
 庭園に対して求めるものは時代・社会に応じて変化し、それは取りも直さず人の心の変化であると言えよう。
 庭園の研究は、人の心の研究に通ずることなのかもしれない。
 そんなことはともかく、庭は良い。
 何も考えず、ぼんやり過ごせるところが特に良い。
 特に人があまり訪れない、公開してる文化財庭園は、非常に良い。
 知識があると庭園への楽しみ方は重層化するが、何の知識がなくても楽しめるのが庭園の良さだ。
 でも、知識はあっても邪魔にはならない。
 本書は、そんな邪魔にならない知識をそっと仕込ませてくれる良書である。
  
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:449 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

読んで楽しい:2票
参考になる:29票
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この書評へのコメント

  1. noel2022-03-23 09:32

    やや、こんな楽しい本があるのですね!

  2. 休蔵2022-03-23 19:35

    そうなのです。
    ただ、普通の新書だからカラー写真をふんだんに掲載している本が恋しくなりました。

  3. No Image

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