白状します。
実は私、アルセーヌ・ルパンものはほとんど読んでいないのです。
子供の頃、ポプラ社から出ていた子供向けの本を何冊かと、その後短編をいくつか読んだ程度で、有名な『奇岩城』も『813』も全く読んでいないのです。
これに対してホームズものはこれまで何度も繰り返し読んできましたし、現在も河出書房新社版のハードカバーのホームズ全集全巻を所有しているのです。
この差は一体何なんだ?
ルパンをほとんど読んでこなかった理由は、あくまでもイメージとしてなんですが、ホームズものは推理小説であるのに対して、ルパンものは冒険小説(もちろん推理的要素はあるにしても)という印象だからかもしれません。
本書は、そんなルパンをほとんど読んでいない私にも楽しめた、ルパンって結局どういう作品だったのかを丹念に綴った一冊です。
様々なテーマを設定し、それらの事柄がルパンの作中ではどのように描かれているのかを論じているのです。
扱われているテーマは……
服飾、アクセサリー
武器
宝石
乗り物
様々な職業
飲食物
当時の風俗
などなどです。
私がほとんどルパンを読んでいないせいもあるのでしょうけれど、結構ルパンに対して誤ったイメージを持っていたことが分かりました。
では、そんな私が間違っていた点を中心に、本書で触れられている事項をいくつか拾ってみましょう。
〇 ルパンはいつも気付け薬の小瓶を携帯していた
まぁ、それだけ作中の女性たちが頻繁に、ばったん、ばったん失神していたということのようですけれど、それにしてもさすがに怪盗紳士ですねぇ。
ちなみに、ルパンは服のポケットから本当に様々な物を取り出すようで、相当に大きなポケットだったと思われるとのことです(笑)。
〇 ルパンはモノクル(片眼鏡)は一切かけたことがない
これは驚きました。
ルパンと言えばタキシードにシルクハット、モノクルというイメージだったのですが、一部の変装時を除いてはモノクルなんてかけてないんだそうです。
どうやらこのイメージは挿絵の影響なんだそうですね。
〇 ルパンは自身の犯行声明として名刺を残していったことなどない
これも結構意外でした。
「〇〇の宝石は頂いた」とか書いた名刺を残していきそうなんですけれどねぇ。
『麦わらのストロー』という作品で、犯行現場の領地の門に「アルセーヌ・ルパン」と書き残したことがあるのがせいぜいだそうですよ。
〇 ルパンはほとんどアルコールを飲まない。いつも水ばかり飲んでいる。
え~、そうなの?
フランスの怪盗紳士なのですから、シャンパンやワインは普通に飲んでいるのかと思ったら。
そもそもルパンはあまり美食家ではなかったとも書かれています。
作中にそういう描写がほとんど無いのだとか(御馳走を振舞っているシーンが出てきても具体的にどんな料理なのかには触れることがほとんど無いのだとか)。
あと、ルパンは菜食主義くさいとも書かれています。
というわけで、私の中の誤ったルパンのイメージを是正するのに参考になりました。
本書はこのような内容ですので、やや単調に感じてしまった部分はありますが、ルパン大好きでこれまでに作品を読んでこられた方であれば、私などよりもずっと楽しめる内容なのではないかと推察します。
私も偕成社のルパン全集でも読んでみようかなぁ……。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
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