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新たな名探偵登場と思いきや、やはり最後は明智小五郎で決まり!

  • 蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション(8)
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  • 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
蜘蛛男  江戸川乱歩ベストセレクション(8)
『女事務員募集、十七八歳、愛嬌ある方、美術商接客係、高給、午後三時より五時まで来談。Y町関東ビル稲垣美術店』

新聞の三行案内を見て関東ビル十三号室にやってきた里見芳枝。好奇心旺盛な彼女は店主の稲垣氏に誘われ麹町区R町の古い邸を訪れる。その日から芳枝は消息不明となる。ある日、稲垣美術店が取り扱う写生用石膏像に塗り込められた彼女の右腕がとある中学校の絵画教室で発見される。さらに別の中学でも発見された。そう、犯人は芳枝の死体を幾つかに切断して石膏にて覆い、写生用標本として諸方に販売していたのだ。

新聞広告に犯罪の匂いを感じた畔柳博士と助手の野崎青年はこの謎を追うことになるが、追求空しく第2の殺人が発生。犯人は「蜘蛛男」と名乗り、第3の標的として人気女優の富士洋子に狙いを定める。波越警部と畔柳博士が捜査するが、蜘蛛男は変装術で警察を翻弄する。互いの知略の限りを尽くした丁々発止の攻防は手に汗を握る攻防。

蜘蛛男を追いつめる畔柳博士と野崎青年はさしずめシャーロック・ホームズとワトソンを想起させる。江戸川乱歩作品を代表するキャラクター明智小五郎と相対する名探偵としてこの二人を作り出したかのようだ。畔柳博士を中心にこの残虐な殺戮事件が解決されるかと思いきや、後半に洋行帰りの明智小五郎が登場する。畔柳博士と小五郎がどのような関係性を持って物語が進行していくのか。

小説『蜘蛛男』はこの後二転三転めまぐるしく攻守ところを変える展開となり、ついに小五郎と蜘蛛男の一騎打ちへと突き進んでいく。ここは、本書の読みどころなので内容は伏せるが、このあたりから捲るページが止まらなくなる。

作家として絶好調であった時期に着手された長編スリラー連作の記念すべき一作目。

『ルパンものと涙香の書き方を混ぜ合わせたようなものをめざしたのだが、思うように行かなかった。』(解説より)

と乱歩は辛口な自己評価を下しているが、読者としては大満足の一作である。その後、『魔術師』『吸血鬼』『黄金仮面』『盲獣』・・・と続く、通俗長編のはじまりと考えてみると、是非とも抑えておきたい作品である。
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  • 掲載日:2026/03/14
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この書評へのコメント

  1. ef2026-03-14 09:21

    乱歩って、時に妙に読み返したくなります。
    代表作はあらかた読み終えているのに、時にふっと「あれ、また読みたいな~」って思うことがあります。

    既読なのですがレビューをまだ書いていなかった『続・幻影城』なんて先日読み返していました(この機会にレビュー書きましたとも! 約1ヶ月後にup予定)。

  2. いけぴん2026-03-14 09:54

    今まさに読み返ししてます。
    妙に惹かれるんですよね〜

  3. ef2026-03-14 10:05

    分かる~。いけぴんさんの読み返しレビュー楽しみにしています。
    あ゛。ここは同じ本を読み返しても、新しいレビューを書けないんですよね。書いたとしても自分の過去レビューの上書きになっちゃう。

    システム上、仕方が無いことなのかもしれませんが、私、『読み直し』にはとても大きな意味があると思っていて、もちろん、だからこそ、読み返しのレビューも貴重だと思うのですけれど、ここも含めて、大抵のところ(と、言っても残念ながらレビューサイトはかなり少ない)はこれは許していないようです。

    『時を経たレビュー』(つまりは、同じ本の読み直しレビューを許すというシステム)っていいよね、と、私もここの運営さんに何度か提言しているのですが、なかなか難しいようです。

    いけぴんさんの読み直し乱歩にもとても興味があります。
    読む側が年を重ねたら、読み味はもちろん変わってきそう。
    そこが、『年を重ねたレビュー』の醍醐味じゃないかなぁって思っています。

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