こいつは面白いおすすめです。
ジャンルはsf短編集。されど難解。読みにくい。
不思議な話しが多いです。
発想がかなり斬新でSF好きなら満足してもらえると思います。
著者はフランスの哲学者。故に・・・文章が固い。
それが難点。
>>彼は死なないんだよ、人が経験することをすべて経験しちゃっているんだ。
最後の作品 第七 を表しています。
6回死んで7回生き返る男。それも同じ時代、同じ環境で。フランと教師というか友のような存在と、恋人であり妻であるハーディとともに生きる刹那的な人生でした。普通は、だんだん良くなるのですが、そうでもなくて最後のほうは悲惨でした。全部の記憶が自分だけ残っているというのが悲惨。
エリセンㇴという短編が秀逸でした。
エリセンㇴとは、生命の年齢という意味だそうです。
記憶を遡行し、若返ることができるドラッグの話し。
このドラッグを使用すると、肉体はそのままで精神だけが望む年齢に遡行できるのです。
木簡という作品も不思議でした。有名バンドを結成している男、彼には世界的な代表曲があった。ある男が訪ねてきて、叔父がその曲が発表される前にその曲を作曲していると言い出す。確かに、そこにはあった。どころか、他の有名な曲もその曲たちが産まれる前に存在していて、そのルーツは木簡にあり、その木簡は世界最古の録音媒体なのだそうだ。
サンギーヌはホラー的な物語。世界的に有名なモデルが何年たつても老けずきれいなままだつた。ときどき、顔に傷とかが発生し、田舎の家に引きこもると治癒される。そこには顔のめちゃぐちゃな彼女の幼馴染という男がおり、その彼と彼女の顔には相関関係が・・・、つまりドリアン・グレイの肖像みたいな感じなのです。つまり、彼の顔が傷つくと彼女の顔は綺麗になり、その逆もある。だから彼は常に顔を焼くなどして傷つけている。
永久革命 は 幽体離脱。離脱した左翼活動家の女は別のもしもの世界、だれだれが生きていたらとか、革命が成功していたらという世界に透明人間として出現するのです。そこで見えてくるのは、彼女の願いが叶ったとしてもそれはより良い世界とは言えない。今のほうがましという現実でした。
宇宙人の存在は、ああいうUMAを信じている熱心な人たちを描いた話しで、信じなくなったとたん消えてなくなるというのが不思議です。
半球 は一番興味深い話しでした。戦後、世界は荒廃し、分断します。具体的にはドームというバリアの中に自分と同じ思想の人たちが集まり暮らしている世界を形成し、そこでは情報伝達が遮断されています。所謂、独立国状態。なのに、インフラとかは共有してて、監察官が定期的に問題はないかと巡視しています。その監察官視点で描かれています。
世界はだんだん一つになりつつある。そういう印象を僕は描いていて、性差、人種、国別などもなくなりつつあると思っていたのですが、この世界では逆行していて、例えば奴隷制に賛成とか、キリスト教徒とか、レイシストとか、動物や植物も人間と同じような権利があると思っている人とか、死刑廃止を訴える人というような同じ考えの人がドームに集まり他とは独立しひきこもり暮らしているという世界なのです。
ここに僕は今を感じました。ネット社会になり何の情報にだって触れられるようになった今、さらに分断は深まっていると学者の人たちは言いますが、それはある傾向の人たちが、同じ傾向の人たちとだけsnsなどで繋がり、他の意見の人たちを見ない。排除するという傾向があるというのです。そういう社会の先に、このディストピアな世界が存在しているのだと感じました。
とにかく難解ですが楽しい。おすすめの作品です。読むのに少し苦しみますよ。
2026 4 6
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