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DBさん
DB
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疫病の歴史をたどる本
コロナウイルスが世界を席巻しているので、さすがに外出も旅行も考えないといけない世の中ですね。
良くも悪くも夏までには収まって欲しいものですが、歴史を振り返ると疫病は人類のパートナーだったようだ。
本著では歴史的に重要な十六の疾病についていつどのように流行したかとか、それが人類に与えた影響や細菌を研究して戦ってきた学者に焦点を当てて解説しています。
まるで微生物学の教科書をおさらいしているような本でした。
法定・指定の伝染病暗記したしね。
その後制度が変わって種類も増えたけど。

疫病に対する特効薬やワクチンの研究に生涯を捧げた学者たちが紹介されています。
パスツールやコッホといった学者に並んで、北里博士もよく出てきます。
今でこそ伝染病の原因菌やウイルスって特定されているけど、それがわかるまでにはいろんな苦労の歴史があったのが読み取れる。

そもそも顕微鏡ができるまではウイルスなんて概念でしかなかっただろうし、次々に恐ろしい病気が伝播していくなんて悪魔の所業か神の祟りくらいしか思いつかないだろう。
過去には人口が半減してしまうような恐ろしい伝染病が何度もはやったのだろう。
ヨーロッパの街でペストの記念柱を見たのを思い出した。
家族や隣人が次々と奇病で倒れていく恐怖、荒れ果てた街や村。
そして戦争の趨勢を支配したのも疫病だったのかもしれない。
今でも人種差別やパニックがニュースになっていますが、中世ではペストの原因だとされて大勢のユダヤ人が焼き殺されたり墓地で吊るされたりしたそうだ。
しかも彼らが他の人種に比べて衛生的な生活をしていたからペストの被害が少なかったのが、迫害の原因だったらしい。
さすがに病気の原因がウイルスだとわかっている現代ではそんな誤解も生まれないだろうが、それでも問題が起こるあたり人間は変わっていないんだなと思いました。

ペストやコレラ、ハンセン病あたりは一応覚えただけだし、ブルセラ症もズーノーシスで暗記しただけだった。
炭疽病やボツリヌス症は生物兵器の方でお馴染みですね。
あとはジフテリアや破傷風、百日咳みたいに予防注射として記憶しているだけの病気もある。
梅毒や淋病のように今でも普通にみられる病気や、サルモネラ症や細菌性赤痢のように輸入感染がたまに問題になるものもあり。
結核も減ったとはいえ多剤耐性菌化して生き残っていますね。

梅毒の症状を隠すために白粉やカツラにつけ黒子、レースの襟が流行したというのは知らなかった。
あと抗生物質が発見される前の治療法に水銀やヒ素が使われていたというのは衝撃でした。
治るものも治らなくなるような。
抗生物質と公衆衛生の発展って偉大だったと思う。
でも人類対細菌ウイルス連合軍との戦いは続いている。
新型インフルエンザ、コロナウイルス系の肺炎、デング熱やジカウイルスとニュースで見ているだけでも次々と新手が現れてくる。
健康って何だろうと考えさせられました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2035 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. hacker2020-03-22 14:36

    DBさん、ここ30年ばかり感じていることですが、地球が生態系の一部である人間の数を一生懸命減らそうとしているのではないかと思います。

    こんな風に思うのは私ぐらいかもしれませんが、人間も自然界の一部であることを忘れないようにしていかないと、いろいろなしっぺ返しがこれからも待っているかもしれません。

  2. DB2020-03-22 19:24

    こんな事件があると、人類もまだまだ発達途上なのかなと思います
    発達できるか絶滅するかは地球次第ですね

  3. 三太郎2020-03-23 08:44

    DBさん、こんにちは。

    新型コロナウイルスの流行で、欧州ではミネラルウォーターが買い占められたと聞いて、欧州では疫病というと今でもペストを連想するのかなと思いました。ペストは飲料水から感染したのでしたね。

  4. DB2020-03-23 12:11

    自邸に専用の井戸を持つ富裕層は生き残ったみたいな話もありましたね。
    水道水が飲めない地域もありますが、どこの国でも買い占め問題は深刻ですね。

  5. No Image

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