世の中の多くの人たちは、概ね、自分の人生は、浮き沈みは多少あったが、幸せな人生を歩んできたと思っていると思う。過去を振り返り、良き思い出に浸りつつ、年老いた日々を送っていると思っている。ところが、どうも私は、失敗の繰り返しばかりの人生だったと思い、あの時もこの時も、あんなかるはずみな発言行動をしてしまったから、と悔やむ思いでばかりがいつも浮かびあがってくる。
物語の主人公石村圭斗、1週間も母が帰って来ず、ガスが止められた中ひとり部屋に閉じこもっていた小学生のころのこと、置き引き未遂の少女を気に掛ける話、マッチングアプリで知り合った看護師果子との交流、物語の中で、色んな出来事が起きる。
そんな出来事のたびに、圭斗自身が行動を起こしたり、相談に乗ってアドバイスする。私の場合と違って、その都度圭斗は、何故自分はこんな行動をとったのか、こんな忠告をしたのか、必ずその訳を自問自答し、その判断で間違っていないんだと自分を納得させる。それが、問題を引き起こしても、自分はその行動を納得してしたのだと考え、いさぎよくスパっと先生の仕事をやめ、これでいいのだと警備員の仕事に転職する。
全く圭斗は後悔をしない人生を歩む。こういう人生を歩める人は、幸せな人生を歩むことができたと、人生を振り返って思うんだろうなと読み終わったとき深く感じた。
東京に出張した時、あちこちに朝からやっている居酒屋があることに驚いた。
夜勤警備員と夜勤看護師の果子が仕事を終えて、一杯飲みに行こうと居酒屋に行き、クィーっと、朝出勤してくる人たちを尻目においしそうに乾杯をする。
東京は広い。そしてなんともすがすがしいいい風景だ。
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