日本語で無くても、スラングは元の意味を考えるとかなり面白いものだが、日本には慇懃無礼という感覚がある。「貴様」などはその最たる例だろうし、「先生」も敬意表現でありながら、目下の人に使えば、明らかに相手を揶揄した表現になる。
中でも、悪態・罵倒語に絞ってまとめてある本書。目次を眺めただけで、ブス、ババア、淫乱、甲斐性なし、犬畜生、小便たれ…とコンプライアンスが叫ばれる昨今では公共の場で耳にしない言葉が並んでいる。
「ブス」の語源は、毒である附子を飲んで苦しがっている人の表情からきたと読んだことがあるが、本書では、「すけ」に不器量の「ぶ」をつけて、「け」が略されたものという説をとっている。私が知っていた説は触れられてもいないことを考えると、現在の主流は「ぶすけ」からの転用ということになるのだろう。
現代における「ブス」は、男が主催するミスコンを批判するウーマンリブ活動家への蔑称となっていったという歴史があるらしい。
もっとも、「ブス」「バカ」は時に愛情表現になることもある。また、「バカ」と「あほ」どちらを言われた方が傷つくかという東西の違い、そういう例も多数列挙してある。
私は、「男は男らしく、女は女らしく」育てられた世代であるから、体力不足を露呈したり悔し涙を流したりという、いわゆる「男らしくない」言動には、「ちんちん無いのか」「金玉ついてんのか」と罵倒されたものだ。日本人がそういうことを考えていた例は、「宇津保物語」で、皇后が「ふぐりなし」と発言しているところにもみられるそうだ。
本書は、国会の中で使われた例が頻繁に出てくる。もちろん、バカヤロー解散は有名だが、政治腐敗を体臭に例えたり、くそに例えたり、まあ先生方もあまり上品な人たちでは無いらしい。
本書は、最後は「くそ」に関する言葉をいくつか挙げて終わる。日本人は元々人前で洟をかんだり、鼻くそをほじったりすることをそこまで行儀が悪いと思っていなかったそうで、欧米との接触がそれを変えたらしい。
そうだよね、この国はもっとおおらかだったはず。
辛い時こそ、「なにくそ!」とやる気を出さねばいけないな、とつくづく思う。
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