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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
タイトル「そして誰もいなくなった」とは文字通りの意味があるけれど、その意味をそのまま素直に受け取ったら、そんな馬鹿な、と思う。
デヴォン州の海岸沖にある小島「兵隊島」の豪奢な邸宅に、正体不明の主から招待(雇用)された10人の客と使用人は、実は、過去に重い罪を犯している。それにも関わらず法で裁かれることがなかった。(できなかった)
島での初日の夕食後、どこからか流れてきたのは、十人それぞれの罪状を読み上げる声だった。
そして、まるで断罪のように、一人、一人、姿の見えない殺人者に殺されていく。
「十人の小さな兵隊さん」というわらべ歌通りの殺され方、ダイニングテーブルの上に置かれた十人の兵隊さん人形(一つ、ふたつ、と減っていく)という道具立てなど、ぞくぞくする雰囲気をもりあげる。

殺人者はどこにいるのか。いいや、島には、招かれた10人以外、人の気配はないのだ。
そうだとするなら、十人の中に、犯人が混ざっているということか。
さて、犯人は誰なのか。
非情にも着々と登場人物が減ってくるので、最後には犯人が残るはずなのだ。
本当に?

この暗く、押しつぶされるような雰囲気。
緊迫感、疑心暗鬼。
だれも信用できない孤独感のなかで、それぞれがそれぞれらしいやり方で自分自身の過去と向かいあうのだ。罪悪感、後悔、開き直り、言い訳……小出しの心模様が、現実に進行している殺人事件と混ざり合って、雰囲気を盛り上げる。

赤川次郎さんの解説の「これほど人が次々に死んで行くのに、少しも残酷さや陰惨な印象を与えない」に頷いている。
むごい物語を読んだはずなのに、読後のすっきりしたあと味は、他のクリスティーの作品にも言えて、だから、こんなミステリをもっと読みたいと思うのだ。





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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1739 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

読んで楽しい:6票
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この書評へのコメント

  1. ef2021-04-05 03:13

    これはクリスティの傑作ですよね。
    ぱせりさんが本作をレビューしてくれて嬉しい限り!
    私はクリスティ作品の三本の指に入る名作だと思っています(他の二つは『アクロイド』と『ABC』だと思っている……次点『オリエント急行』)。
    私も何度も読み直している作品ですが、全然飽きない。ミステリだというのにこれだけ再読に耐えられる作品というのも凄いことだと思います(毎回、分かっていながら唖然とさせられちゃうんですよね~)。
    クリスティ一流の叙述の上手さがあると思うのですね。
    この作品はこれから先も読み継がれていくのでしょうね。
    そして……まだこの傑作を読んでいないという方!
    なんと羨ましい!!(笑)。
    だって、これからまっさらの状態でこの傑作を堪能できるわけでしょ?
    この不可能性に頭を悩まし、驚愕するがよい!(既読者の高笑い←ちょっとイヤな奴:笑)。
    そして、読み終えたら、しばらく呆けていて……いつかまた再読するのだよ。

  2. ぱせり2021-04-05 05:16

    efさんの高笑いが聞こえます(^o^)
    これ、ほんとにおもしろかったです。あれがあーなってこーなって、そこまでで充分すごいのに、まさかのこんな結末だったんですねえ!
    ほんとに傑作ですねえ。
    何もかもわかって再読しても絶対おもしろいと思います。わたしも、いつかまた読もう♪
    efさんのクリスティー三本+一本、今まで読んだクリスティーの中では、意義なしです。(まだ、未読のクリスティーがどっさりあるので、まだまだおもしろい作品に出会わせてほしいな、と思いつつ)

  3. ef2021-04-05 12:22

    あれ? ぱせりさん、初読だった?(てっきり再読だと思ってた)。
    そっかー。
    じゃあ、これからは既読者高笑い組に入るのだ~(笑)。
    共に羨ましい初読の皆様を生温かく見守っていきましょう!

  4. かもめ通信2021-04-05 12:38

    そうそう、聞こう聞こうと思いつつ、聞きそびれていたんだけれど、
    ぱせりさんがクリスティー全点制覇(なのかな?)をめざそうと思ったきっかけは
    なんだったのかしら?
    どこかで言及されていたっけ?(私が読み落としただけかな?)

  5. ぱせり2021-04-05 17:02

    efさん、実は昔読んだことがあるはずなのですが、もうほんとに昔で、ほとんど忘れていました。これを忘れられるのもすごいのだけれど、覚えているのは、題名の通りの話だったんだ、という衝撃(それだけでもかなりのインパクトでした)だけですから、初読と一緒ですよね。
    読んで初めて知ったことがたくさんでした。まさかまさか、こんなところに連れてこられるとは!!ほんとおもしろかった!
    高笑い仲間、うれしいな♪

  6. ぱせり2021-04-05 17:08

    かもめ通信さん、よくぞ聞いてくれました、というほどのことではないのですが、きっかけは、杉みき子さんの「マンドレークの声」https://www.honzuki.jp/book/290956/review/249182/
    でした。
    杉みき子さんがクリスティーファンだということは以前から聞いていたのだけれど、ここまで!?というほどのクリスティー愛を感じて、大好きな作家さんがそこまでいうなら、わたしも読んでみようかな、と思ったのでした。
    ほんとは有名な作品を数点読んでみよう、というくらいの気持ちでしたが、読み始めたら、全点制覇をめざしたくなっちゃったんです。途中で辞めちゃうかもしれないけど、その時はその時で、楽しみながらぽつぽつ読んでいこうと思います♪

  7. ゆうちゃん2021-04-05 18:14

    書評楽しく読ませてもらいました。
    僕の持っている本は、かなり古い版なのですが、島の名前も人形も兵隊さんに変わってしまっているのですね。やっぱり元の名前は現代では不適切と判断されたのだと思います。それがオリジナルから改訂されたのか、日本語訳独自のものなのか興味のあるところですが・・・。

  8. ぱせり2021-04-05 20:02

    ゆうちゃんさんの書評、読ませていただきました!
    最初から兵隊さんではなかったんですね。(島の名前まで!)
    替え歌だなと思っていたんですけど、物語には、替える理由ないし……
    ほんと、どこで変えられたのか、興味あります。

  9. No Image

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