ある男



事故により突然死んだ夫は、生前名乗っていた「谷口大祐」という人物とは別人だったと知った妻。死んでから暴かれる捨てたはずの過去。彼はいったい何者なのか。アイデンティティとは何なのかを考えさせられます。
事故により、夫が若くして突然帰らぬ人となった。 妻の里枝にとっては二度目の結婚。子どもを病…
本が好き! 1級
書評数:422 件
得票数:9247 票
国文科出身の介護支援専門員です。
文学を離れて働く今も、読書はライフワークです。



事故により突然死んだ夫は、生前名乗っていた「谷口大祐」という人物とは別人だったと知った妻。死んでから暴かれる捨てたはずの過去。彼はいったい何者なのか。アイデンティティとは何なのかを考えさせられます。
事故により、夫が若くして突然帰らぬ人となった。 妻の里枝にとっては二度目の結婚。子どもを病…



偶然出会ったかつての友人に頼まれ、1年前に起きたベランダからの転落死事件について調べることになった吉村。それは本当に事故死だったのか。残されたラジオの配線図の謎。配線図がわからなくても十分楽しめます。
仁木悦子の長編第三作だそうです。 新聞記者で、病気休職中の吉村駿作は、街で偶然大学時代の友…




戦争、死、刹那的な恋。一瞬ヘミングウェイを読んでいるのかと錯覚しました。戦争がヨーロッパを席捲していた、未来の見えない時代。主人公はパリで逃亡生活を送る医師。過去を消した、根のない男の孤独。上下2巻。
戦争、死、刹那的な恋。ヘミングウェイを読んでいるのかと一瞬錯覚しました。違います。この本の作者は、…




『岬』に続く紀州サーガのひとつ。路地のしがらみから、実父の存在から逃れることのできない秋幸が犯した残酷な罪。作者自身をモデルとした秋幸は、路地に留まる人生を選択した、もう1人の自身の姿なのでしょう。
紀州サーガのひとつで 『岬』 の続編となります。母のフサを主人公とした前日譚 『鳳仙花』 はこの後…




紀州サーガ3部作の1となる『岬』。作者自身をモデルとした秋幸が主人公。『鳳仙花』はその前日譚です。自死した兄。姉の病。過酷な家庭環境の中、自らの出生を思い、母と生みの父への複雑な感情が吐露されます。
紀州熊野サーガ3部作の1となる『岬』。この前日譚となる 『鳳仙花』 は後から書かれたものですが、先…




現代でも人気の高い世話物の演目「女殺油地獄」。斬新なストーリーは初演当時は不評であったようです。もうひとつは時代物の代表作「出世景清」。どちらも見せ場と思われる派手なアクションシーンが印象的です。
「女殺油地獄」 近松晩年の世話物浄瑠璃で、現代も人気の高い演目ですが、初演当時は不評であっ…



『桜の実の熟する時』の続きとなる藤村の自伝的小説。婚約者のある女性との別れ。友人の自死。そして、長兄の投獄。「生きる」ことに悩みつつも「生きたい」と願う若者たちの姿に、若かった頃の自分が投影されます。
島崎藤村の最初の自伝的小説で、後から書かれた 『桜の実の熟する時』 の続きになります。時に藤村は2…



きらきらした学生生活に違和感を抱き、悩みながら自分自身を探す旅に出る主人公は、おそらく藤村自身。恋に初心で、恩人に忠実で、だからこそ見失いかねない自分自身。「年若き読者に勧めて見たい」と作者は言う。
「年若き読者に勧めて見たい」と作者は言います。主人公はとにかく初心です。20歳を過ぎて、どうしてこ…



「平安時代の人はどんな思いで『源氏物語』を読んでいたのか?」。私が『源氏物語』を読む中で常に考えていたことです。この本は、「源氏物語」のあらすじとエッセイを通して、そんな思いにヒントを与えてくれます。
2024年から2025年初め、約1年という時間をかけて『源氏物語 新潮日本古典集成』を読み通しまし…



イングランドの田舎の等身大の少女が、初めての恋を成就させるまでを描いたはらはらどきどきの物語。べたな展開とわかっていても、興奮する気持ちは抑えられず、当時の読者たちを共感させたのだろうと想像できます。
イングランドの田舎の中流階級に生まれ育った少女がいかにして恋をし、結婚に至るかを描いた、オースティ…



静かに家と人を照らす北からの光。ノースライト。建築士の青瀬が建てた最高傑作の家には、なぜか誰も住んでおらず、一脚の椅子だけが置かれていました。その家を軸に、様々な人々の人生に差し込む光が描かれます。
ノースライト。北からの光。悟りを開いたかのように物静かな光。 あなた自身が住みたい家を建てて下さ…




50代後半の村上春樹が、「走ること」を通して描いた人生のメモワール。なるほど。走らない私の人生とも不思議と合致します。私も「フラメンコ」を通して、自身のケアマネジャー人生でも振り返ってみましょうか。
村上作品の読者として、村上春樹が走ることはよく知っていますが、私自身が「走ること」に全く興味がない…





西部戦線異状なし。そう報告する人の耳には決して聞こえるはずのない、まだ20歳の若き兵士の慟哭の声。訴えでも告白でもない、ただの一時代の報告が読者の胸を打ち、兵士たちの恐怖と悲しみを浮かび上がらせます。
海外の戦争文学を読みたいという思いで手に取った本の一冊です。戦場に立っている兵士の日々の出来事の記…




12隻の戦艦群の中で、唯一敗戦まで生き残った長門。しかし長門もその翌年、原水爆実験の標的艦となり、ひっそりと海底へと沈んでいきます。自ら海軍に属した作者が軍艦長門の目を通して日本海軍の歴史を描きます。
戦前の日本で、真に世界の水準に達していたと言われる帝国海軍。軍艦長門は、総計約48万トンの12隻の…




日本とロシア。今も昔も、近くて遠いふたつの国に翻弄された人々は多い。江戸時代、ロシア軍艦によってシベリアへ連れ去られた五郎治。二度も逃亡を企て、帰国への思いを絶やさなかった男の一生を描きます。上下2巻
日本とロシア。その近さと遠さを感じました。今も、昔も。 巻頭には当時の「東北アジア概念図」…




ピコーラが幸せになるには青い眼を手に入れるしかないのだとしたら、それは何と悲しいことでしょう。あまりに憐れなヒロインの運命に、私たちは自分の心の奥底にも潜む残酷な差別意識に気づきます。苦しいことです。
1941年のアメリカ。この物語はフィクションですが、貧しくて醜い少女が白馬の王子様と出会って結ばれ…




遠藤周作が描く究極の悪。女医の仮面をかぶった悪魔の乾いた心は、いかなる罪にも痛みを感じることはない。悪魔が罰せられることのない不条理は、救われなかった善人たちの、もうひとつの不条理を思い起こさせます。
遠藤周作が描いた究極の悪、すなわち悪魔、それがこの小説の主人公である女医です。彼女が手を下す悪の仕…




人間に愛されて進化してきたネコについて、ネコを愛する著者が徹底的に研究しつくした、かなり専門的な本です。私たちが今ネコの幸せのためと信じて行っていることは、ネコの未来のために正しいことなのでしょうか。
タイトルからして、ネコについてのエッセイみたいなものかと思って軽い気持ちで読み始めたところ、予想に…



「島原の乱」を描いたノンフィクション。禁教令の時代、キリスト信仰の復活を求めることが乱の目的であったとする著者。彼らの強さの要因はそこにあるのでしょうか。天草四郎についての言及の少ないのが残念でした。
天草地方への旅行を計画したことから、島原の乱についてノンフィクションで書かれた作品を読んでみたいと…




作者が創作した3人の男たちを主役に、島原の乱が描かれます。関ヶ原で別れ別れになった3人がそれぞれの道を歩み、それぞれの立場で相まみえる島原の地。悩み、戦い、生きる彼等が見出したのは、それぞれの神の姿。
天草地方への旅行を予定していた時に、島原の乱を舞台とした小説を読みたくて手に取った本です。 …