日本の治安は徐々に改善され犯罪件数も減少していますが、その中で特殊詐欺と言われるものだけは増え続けています。
警察庁の定義によれば、特殊詐欺とは「被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ指定した預貯金口座への振り込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称」ということです。
それには、オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗、還付金詐欺、架空料金請求詐欺などがあります。
また特殊詐欺と分類されないものにも、SNS型投資詐欺、SNS型ロマンス詐欺等があります。
こういった詐欺の発生を防ぐには加害者の摘発と処罰を迅速適正に行うということも必要ですが、一方では被害者にこういった犯罪の手口を周知することが必要と考えられ、各地でそういった活動も行われています。
しかし、どうやら手口の周知という方法だけでは発生を防ぐには不十分のようです。
そこで、犯罪心理学の研究者たちが特殊詐欺に関わる心理というものをまとめたのがこの本であり、多くの専門家がその研究内容を解説しています。
そういった主旨であるため、特殊詐欺自体の説明も最初に置かれていますが、それよりも「詐欺脆弱性」つまり詐欺に引っ掛かりやすい心理についての研究成果や、それを判別するチェックシート作成の概要、社会的環境から詐欺被害を予防する方法などといったものが解説されています。
オレオレ詐欺における心理テクニック分析というものもありました。
互酬性の原理というのは「相手に何かしてもらったら自分も何かしてあげたい」という心理のことで、詐欺犯が最初は優しく接してくるというものです。
他にも「動揺ー具体的指示テクニック」「ドア・イン・ザ・フェイステクニック」「数打てば当たるテクニック」「他人と接触させないテクニック」といったものを巧妙に使ってきます。
高齢者などは詐欺の手口を知らないからひっかかるという思い込みがあります。
しかし詐欺被害者などを調査したところ、そういった詐欺手口は聞いたことがあるという人が多数いました。
知ってはいても実際に電話がかかってくるとやはり引っ掛かる。そういった心理があるようです。
何より、詐欺の手口は日々巧妙になり、以前聞いた詐欺手口とは少しずつ変化していて対応できないということもあります。
いくら詐欺手口を周知しても、結局は電話に出てしまうと引っ掛かるということがあります。
そのために電話機に録音装置を付けるとか、家の電話は常時留守録にしておくといった方策が推奨されています。
しかしどれだけ推奨してもなかなかそういった対応をしてくれないという問題があります。
そこには「自分は大丈夫」といった思い込みや、対応機器がやや値が張るといった問題もあるようです。
最後に取り上げられていた問題が「詐欺被害者を周囲の者が責める」ことです。
金を取られた上に、家族や親族などから責められて自殺してしまった人まで出ています。
財産を取られて遺産がなくなったと責める子供までいるというのですから、犯罪者と同じくらいに問題かもしれません。
この書評へのコメント