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ぽんきち
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ニーノシュク(ノルウェーの公用語の1つ、「新しいノルウェー語」の意)で書かれた、詩のような物語。
著者は2023年、ノーベル文学賞を受賞している。
壮年期には劇作家として活躍し、世界を飛び回る生活をしていたが、飲酒問題などが高じたこともあり、劇作から離れ、家に籠って執筆するスタイルを取っているとのこと。
ノルウェー語にはブークモールとニーノシュクの2種が存在するが、デンマーク語に近いブークモールの方が使用者が多い(ウィキペディアによれば、民間出版物の98%がブークモール、2%がニーノシュクだそうである)。ノルウェーは中世から約400年間、デンマーク支配下にあったという。ニーノシュクは「新しいノルウェー語」の意だが、実際はデンマーク支配以前の言語に近いようだ。訳者あとがきによれば、庶民的で素朴な味わいであるとのこと。
著者は無神論者だった時代もあるが、クエーカーやグノーシス派に魅かれるなど、神秘的なものに共感しているようである。

本書には2編を収める。
第一部は誕生。フィヨルドに住む漁師のオーライは息子の誕生を待っている。
第二部は死。オーライの子、ヨハネスも今は年老いた。そんな彼の1日を追う。
それぞれ、オーライとヨハネスの視点で語られるが、誰かに語り掛けるというよりも、独白のような、脳内の思考を追うような読み心地である。まるで、オーライやヨハネスの中に入り込むようなやや不思議な読後感と言おうか。
句点を使わず、読点やスペースで文を紡いでいくのだが、その独特のリズムがなかなか心地よい。ニーノシュクを知らないので何とも言えないが、原語の味わいを残しているのかもしれない。
そうして語られるのは、世界の中では大きな出来事ではないが、個人にとっては大切なことである。愛する人との出会いや別れ。極めて個人的でありながら、普遍的な事柄。
物語は詩情の中に、どこか神話的な雰囲気も宿す。

夜が明けて、日が昇り、やがて陽が沈んで夜になる。
人は生まれ、生き、そして死んでいく。
そんなものだ。それでいいのだ。
そんな味わいの物語。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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