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竜馬。目指すものややり方が違うことを感じても好きな相手は好き。そして彼に会って彼に惹かれた人はどんなに道を異にしてもやはり彼が好きなことに変わりない。そんな不思議な魅力を持った人。

竜馬がゆく〈3〉
ぼんやり自分の行く道を探していた竜馬がこの巻でやっと動き出します。
勝海舟に出会い「船」への想いをさらに強くする。
あの黒船を見た時から剣を持って乗り込んで異国人を斬ることより自分の船を持つことを望んだ竜馬。

そこには権力者だけに都合の良い政治が行われ、小さな藩に固執する意識やその中での身分の上下に雁字搦めになる「今の世」をすっかり変えたいという思いが根底にありました。

異国では身分職業にかかわらず選挙が行われ、誰でも国を動かす人になれるという。土佐の極端に厳しい身分制度からは考えられないし、当時の人はそれに疑問も持っていない。竜馬はそれを崩したいのです。

「尊王攘夷」に捕らわれた人は無暗に外国人を斬り、幕府の外国への「弱腰」を批判する。ここは神の国だから異国人に踏み込まれ汚されるのは許せないという頑固な信仰心と畏怖。竜馬が友として愛する武市半平太を筆頭にその指揮のもと、過激な動きが広がっています。

幕府側の勝海舟を斬りにいくというのはこれまた竜馬の大好きな千葉重太郎。一緒に行った竜馬は勝海舟を斬るどころか、その(法螺も含むと言われていますが)弁舌の内容にすっかり魅せられるのです。世界の見方が広くてどこか竜馬に近い。もとより船の話となると目がきらきらしてしまう竜馬です。


尊王、攘夷、佐幕。
リーダーと決めた人の言うことを妄信する人、リーダーが喜ぶだろうという人斬りを自分の考えも無く行う人、自分の立場を守りたいだけの権力者や新しいことや知らない世界を恐れるだけの人。
世の中は混迷を極めます。刀を持ち、人斬りが普通に横行するところがますます混迷を強めているように思います。

竜馬には「海軍を持ち貿易で国力を強め外国と対等になる。幕府や藩などつぶして統一した日本国を作る」という どんな思想にもない理想が形になってきています。ただ今はそれを声に出す時ではない、理解する人も多くないだろうと。


勝海舟を初め、この巻では後に活躍する人たちが多く登場します。有名な愛妻、おりょうさんもやっと出てきます。

しっかり自分を持った強さのある女性。彼が好きなタイプの中でなぜ特にこの人だったのか、という説明が面白い。火事で焼け出され路頭に迷った彼女の家族を竜馬が救います。「惚れた」とはっきり意識したのは彼の好きな幾人かの女性の中で、自分が「助ける」必要があると思ったのはこの女性だけだったから、というのがそれです。お田鶴さまもさな子さんも逆に竜馬を助けたり生活上でできていないことを心配したり構ってあげていましたものね。

今後いよいよ竜馬の理想がはっきりし、仲間を集めて動き出す巻に入っていきます。

それにしてもこの竜馬、語りかけてものらりくらりと捉えどころがなかったり、服装や髪型がだらしなかったり、礼儀作法無視で偉い人に会ったり。それでも笑顔になると誰もが好意を抱いてしまい、気に入ればとことん力になってくれるような相手が一人とは言わず現れる。タイプを異にして「苦手意識」をお互い持った人とも何だかそれなりに通じ合ってしまう。

不思議な縁をたくさん紡ぎながら世の中をひょうひょうと渡っていく。何とも魅力的な主人公です。




  • 掲載日:2026/04/28
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