「構造」などと、ややいかめしいことばが付く本書は、NHK放送文化研究所が1973年より5年ごとにおこなっている全国規模の意識調査のレポートである。2004年刊行の第六版は、7回目となっている。すでに調査実施から継続してきたことになる。その蓄積は重い。最新ではないものだとしても、時代ごとのレポートは興味深く読める。
本書の段階でも、改めて意識と経済状況との相関の高さがより明らかになったり、当時の政権がポピュリズムと言われる割には、人々の政治参加への有効性感覚がさらに低まっていたり、と興味が尽きない。
一方、同時代にはやったドラマなどの紹介を通して、意識の社会背景を説明するといった講釈は必要だろうか。読者の理解を助ける試みだろうが、時代が経つとかえってわかりにくくなってしまうのではないか。データの動きをもっと率直に語ってはどうだろうか。個々の数字が「具体的に何を表すのか」を判別することは実際には困難だが、数字の動きをみることは、速度計のような時代の「計器」をみることなのだから。
ところで、こうした継年かつ全国規模でおこなわれる調査は、総務庁によるのものをはじめ国民性調査やSSM調査、JGSSなどいくつか挙げられるが、本書のようにその調査成果が一般書として公刊されることは意外にも少ない。それぞれで報告書や論文が多々作成・発表されているのだろうが、一般にもわかりやすく入手しやすいかたちにまでしているのは貴重であり、関係者の努力に敬意を表したい。
こうした調査データというものは、個々の学者がそれぞれで論文を生産するためだけのものでもない。かといって、数字の羅列を提示すれば済むというものでもないだろう。そのデータをもって、その意義と背景を一般に説明する試みがほしい。それは後代からみれば見当違いになるかもしれない。しかし、そうした試みも含めて調査なのではないか。そうであればこそ、時間が経っても、こうした書籍のもつ意味は大きい。
データが蓄積されるとより多種多様な分析手法が適用できるようになってくるが、それは一方で当該調査の中の世界だけで完結してしまうのではないか。本書でも、(前第五版から)限られた選択肢が選ばれる傾向を「一人勝ち指数」として表現し独自の解釈を示そうとしている。このあたりは、他の調査データとの比較検討によってよりはっきりするのではないか。
こうした地道な作業と同時に、同時代を解釈し説明する試み。いつの時代も変わらない調査関係者の課題であろう。
*初出:bk1 2005年2月16日
・再掲載にあたり、いくつか文言の修正や改行などを行いました。
旧見出し:まずは何より関係者の高く努力を評価したい。
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