物語は箱根駅伝の予選会で10秒差で11位となり、本戦に出られなかった、明誠学院大学陸上競技部の様子から始まる。
これは本線を走る大学駅伝チームではなく、学生連合チームの箱根駅伝物語である。
学生連合チームは本戦に出場できなかったチームの日本人選手の中で、一度も本戦に出ていない者、成績順で16人で構成される。
明成学院大学では前島友介の方が成績が上だったが、1年生の時に箱根駅伝に出場しているので、日本人選手中14番目の青葉隼人が選出された。
寄せ集めのメンバーで箱根を目指す物語は「風が吹いている 三浦しおん」が有名だが、それとはまた違って、あちこちの大学からある程度の力量のあるメンバーで構成される学生連合チームの目指す箱根駅伝である。
選ばれた十六人のメンバーのモチベーション・箱根に対するそれぞれの思い。
それを指揮監督する立場である新人監督:甲斐。
中継する局の内部事情も加わって、さすが池井戸潤氏、テンポよく物語は熱く進んでいく。
新人監督の甲斐は社会人であり、1年間の社会貢献制度を利用し会社に在籍しながら明誠学院大学の監督職を務めることになっている。社内でとある事件の責任を問われたことで組織のあり方に失望し『この世の中に本当に信じられるものは無いのか、それを探したい。』と考えている。が、明誠学院大学の陸上部で素晴らしい選手だった甲斐は、卒業後陸上とは全く関わりのない状態であり、監督の諸矢の突然の辞任、監督経験のない甲斐の指名。これは明成学院大学のOB、かつての陸上ライバルたちの反感を買う結果となっている。
中継全権を持っているTV局も、実はギクシャクしている。
メインアナウンサーの突然の病欠に伴う人事の変更。
チーフプロデューサーとスポーツ局長、編成曲調の確執。
スポーツ中継とは何を意味するのか?
大きな命題の答えを巡ってそれぞれの力が暗躍する。
上巻では、チームとしてまとまれない状態が続いていた学生連合チームが、さまざまなきっかけでお互いに通じ合い、箱根で3位を目指すという大きな目標に向かっていくまでが書かれている。
記録として残らない駅伝は誰のために走るのか?
自分のために?家族のために?応援してくれている人のために?
それぞれの思いを心に秘めて、話は下巻へと進んでいく。
実は最近個人的には「この熱さがちょっとなぁ…」感のある池井戸氏の作風なのだが、それでもこのテンポのいい物語の進み方はさすが。
ついつい、夜遅くまで上巻を読み耽ってしまった。
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