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偶然出会ったかつての友人に頼まれ、1年前に起きたベランダからの転落死事件について調べることになった吉村。それは本当に事故死だったのか。残されたラジオの配線図の謎。配線図がわからなくても十分楽しめます。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
殺人配線図
 仁木悦子の長編第三作だそうです。

 新聞記者で、病気休職中の吉村駿作は、街で偶然大学時代の友人塩入哲夫と出会います。その塩入の従妹の父が、1年前にベランダから転落死し、従妹がそれを自分のせいだと思い悩んでいるため、塩入は吉村に、別の原因をでっち上げて従妹を安心させてくれないかと頼みます。しぶしぶその申し出を受け入れた吉村はしかし、事件を調べていくうちに、事件の真相に本気で興味を持ち始めます。したがってこの作品の探偵役は、吉村駿作です。

 探偵となるきっかけがちょっと強引すぎないかと、読み始めた瞬間かなり引っかかりましたが、読み進むにつれてそんなことはどうでもよくなってきます。

 塩入哲夫の伯父塩入卓之助の転落死は本当に事故だったのか。その転落の原因は本当に、娘のみどりがベランダにこぼした髪油に滑ったからなのか。少しずつ明らかになっていく事実と矛盾。新たに登場する、塩入家に関わりのある人物。色んなことが怪しく、心に妙な引っかかりを覚えることが次々と出てきて、ページをめくる手が止まらなくなります。

 事件の舞台となるのはレンガ造り三階建ての豪邸。仁木悦子が事件の現場をやたら豪邸にするのは、女中などが多く雇われているため、探偵が聞き取りをするのに好都合だからではないかと思ってしまいました。そういう家に限って、家族関係がぎくしゃくしているのもよくある話です。

 そして、それと対比するように描かれる貧しい家族。作品が生まれたのは1960年で、私が生まれるまだ10年も前のことです。お風呂はもちろんのこと、台所すらない4畳半一間のアパート(私が大学生の時に下宿していた部屋もそうでした)に住む夫婦と妻の母。もしかすると当時はこのようなアパートが多々あり、日本の住宅がうさぎ小屋と言われる要因となったのでしょうか。でもそこには、貧しいながら愛とやさしさがあります。

 ラジオを自分で組み立てるなどということも、当時は普通にあったのでしょうか。作品では自分で配線してラジオを組み立てる中学生が登場します。作品のタイトルにもある通り、このラジオの配線図が物語を動かすのに大きな役目を果たすのですが、配線図に関しては、私にはさっぱりわかりません。でも大丈夫です。そんなものはわからなくても、作品を楽しむのに全く支障はありません(と思いますが、わかる方にとってはどうでしょうか)。
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  • 掲載日:2026/04/19
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