消失がテーマの短編集。ある時は入れ子構造のパスティーシュや伝奇SF。ある時は幻想文学と手を変え品を変え読者を翻弄する。
『一九四一年のモーゼル』 有名な「琥珀の間」に絡む館消失問題。かなりの歴史的な背景をベースにえがかれている。この話が一番古典的な館消失トリックに感じる。語り口もそれに近い。
表題作『紙の光』はブラックジャックのカウンティングという必勝法を基本テーマに一晩で町一つが消えるという大胆なトリック。いや確かに物理的には有りうるだろうけど、いくら地下だと言っても……しかしロズウェルと上手く絡ませて話を面白くしている。
『未完成月光 Unfinished moonshine』は、なるほど、それで未完成なんだと思わせる一編。しかし著者は見事に文体を模倣している。そして、ストーリーはホラー・ファンタジーなのに、消失のトリックや背景の説明は○○というよりもクィーン風ではある。しかし、「〇〇」がそんなに危険な物質だとは不勉強で知らなかった。「ボストンの事件」を知るだけでも面白い。
『藤色の鶴』は時間と陰陽道と最新科学のメタマテリアルを上手く絡ませている。まぁ確かに今折〇は最新科学と組み合わされて、見直されてはいるが……
『シンクロニシティー・セレナーデ』は雰囲気的には面白いが、いや当に話題とはなっているが、ヴェスビオスと富士山が結びつくとは……トリックとしては一番説明が付かないけど……
まぁすべてが消失テーマというのは、中々意欲的な短編集ではある。
この書評へのコメント