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1904年6月16日ダブリンの一日

  • レビュアー: さん
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ユリシーズ (まんがで読破)
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ジョイス、バラエティアートワークス『ユリシーズ(まんがで読破)』(イーストプレス、2009)

 世に言う「ブルームズデー」をえがくジョイスの小説をまんが化したもの。382ページあるけれども、おもしろいのでまったく退屈しない。

 アイルランド・ダブリンの1904年6月16日の一日をえがく。世界ではロシアが戦争をしているころで、おかげでアイルランドの景気はよい。

 この一日にまるで人の一生があり、すべての一日に一生と同じ価値があると感じ、その一日のできごと、ダブリンの風景、そこに暮らす人々を文章で微細に描写する、そしてそれらをユリシーズ(オデュッセウス)の冒険神話に対応させることを、文学青年スティーヴンは思いつく。

 主人公はユダヤ人の広告取りレオポルド・ブルーム。妻のソプラノ歌手マリアン・ブルーム(愛称モリー)と興行師ヒュー・ボイランとの浮気を疑っている。

 もう一人の主人公が私立学校の教師で文学を志すスティーヴン・デダラス(ディーダラス)。ジョイスがモデルともいわれる。彼が悪友の医学生マラカイ・マリガンらと交わす会話が深遠でおもしろい。

 小説はスティーヴンとマラカイが暮らすサンディ・コーヴのマーテロ塔の朝から始まり、ブルーム家の夜で終わる。その間のたった一日の何気ない日常の風景に、神話に匹敵する物語が隠されていることをジョイスの類稀な洞察力がえがきだす。

 第一部「テレマコスは苦悩する」から第二部「オデュッセウスは流浪する」の半ばくらいまでは、小説のまんが化として新鮮な驚きの連続だ。第二部の半ばから第三部にかけてはやや駆け足の感がある。最後の章「ペネロペー」の有名なモリーの独白は殆どまんがに描かれていない。もっとも、実験性の強いこの部分はまんが化することがおそらく不可能だと思われる。
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  • 掲載日:2015/10/26
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