昨年秋、日本中でクマ被害が報告され、冬になってクマが山に戻れば被害がおさまるだろうといわれていた。その際、「冬眠」なのか「冬ごもり」なのかでニュースの表現が微妙に分かれていたと思う。
30年前ごろまでは、「冬ごもり」と考えられていたが、現在の科学では「冬眠」に当てはまるという。
では、冬眠の定義は何なのか。
哺乳類の冬眠については、動物が自ら極端な低代謝の活動状態になる「トーパー」が数か月にわたって生じる季節性の現象
と定義づけられている。そしてトーパーが長い状態なので「スーパートーパー」というのだそうだ。
リスなどは体温を一桁まで下げ、時に一気に37度まで上げて、また下げるを繰り返すが、クマは30度ぐらいまで下げて冬眠するのだそうだ。30度って低くないじゃないかと思うかもしれないが、人間なら低体温症で死に至る体温である。
この冬眠という現象の研究は非常に困難を伴う。最大の障害が「季節性の現象」であるということ。クマだろうがリスだろうが1年に1回しか観察できないのである。「概念リズム」の存在が考えられるがその存在を確かめようと思っても、1年単位で1回しか実験ができないのである。これは本当に難しい。
それでも遺伝子解析などで見えてきたものがあるが、著者によると9割は謎のままだそうだ。実際、この本を読んでも、まだまだ「点」と「点」がつながるようになってきたというのが肌で感じられる。
最後は、著者の科学者としての人生が語られている。京大を出て、42歳で東大准教授、43歳で北大教授である。ぱっと見スマートな科学者人生であるが、エリートはエリートの苦しさを抜けてきただというのが本を読むと感じる。
バッタを倒しにアフリカへの前野ウルド浩太郎氏とは好対照といえる。
文系にもわかりやすく書いてあるので、お勧めである。
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