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古今東西、著名人の臨終の様子だけを集め、年齢順に紹介してある一冊。上巻は、八百屋お七から大川橋蔵に至る55歳までに死んだ324人を採り上げている。諸行無常、栄枯盛衰を深く感じる。

  • レビュアー: さん
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人間臨終図巻〈1〉
 私は現在55で、以前から気になっていたこの本を読むのに限界の齢であろう、そんな思いで手に取った。だが、「本書の死亡年齢について」によると、陰暦の日本人と太陽暦の西洋人との違い、また生没年はわかっていてもその月日までは分からなかったり、国や時代により暦法が違ったりするので、西暦歿年次から西暦生年次を引いたものを死亡年齢とした。したがって、表記の年齢は、数え式より一歳少なく、満年齢式より一歳多くなる場合があるとのこと。
 これでいくと、今年の誕生日で56になる俺は既に下巻に該当するのだなぁ。

 本書は「図巻」となっているが、図やイラスト、写真は一切なく、文章だけでその人の経歴や臨終の様子が紹介されている。

 十代と二十代で亡くなった人については、それぞれまとめてあり、合わせて44人が挙げられているが、そのうち外国人はアンネ、ジャンヌ・ダルク、愛新覚羅慧生、ジェームス・ディーンだけで、若くして没した異人で、山田風太郎という人の眼鏡に適うだけの臨終が無かったと見える。

 30歳以降は一歳毎にまとめてある。多くの偉人だけでなく、大久保清や阿部定など犯罪者も同列に並んでいる。例えば33歳の、永野一男。こう云われても、「誰?」となるのだが、多くの被害者をどん底に落とした豊田商事事件の主犯だった。そうだ、昭和60年、新ダイナマイト打線の迫力に押されてどんな決着をみたか覚えていなかったが…。白昼のテレビカメラの前で行われた惨劇だが、リアルタイムで観たら忘れられないものとなったろう。当時はほとんどテレビを観ていなかったのが悔やまれ…いや、トラウマになっていたかもしれない。

 同じく33歳の北条時宗の項では、邪宗はびこる日本に仏罰として異国侵略が起きると説いた日蓮が、邪宗国日本に神風が吹いたことについて触れていないと書いている。こういった皮肉なところがいかにも山田風太郎なんだな。

 48歳の章では、聖徳太子、上杉謙信、織田信長、真田幸村、淀君、大久保利通とこの国の歴史を動かした人物の名前が並ぶ。特に信長は、死は大半の人にとって挫折であるが、挫折であればあるほど完全形にみえる、という典型的な死だという。

 著者が「もう少し生かしておきたかった」と評する人物が何人かいるが、小栗虫太郎や夏目漱石など、どうしても文学者寄りになってしまうのは、同業者だからだろうか。それとも、この人の著作をもっと読みたいという本読みの性だろうか。

 若い頃は人生太く短くがいいと思っていたが、辛いことも多い人生で、長生きの偉さというのを感じている。上巻でとりあげたのは比較的早く死んだ人たちで、パンセなどそのやさしさが命取りになり可哀そうな最期を迎えた人たちもいるが、それでも若くして死んだから苦痛が少なかったという例も多いように感じている。

 下巻は56歳以降なので、満で56を迎えてから読もうか。

 著者の言葉で締めよう。
神は人間を、賢愚において不平等に生み、善悪において不公平に殺す。


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  • 掲載日:2025/02/24
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