休蔵さん
レビュアー:
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野生生物についてしっかり研究し、その保全と管理のための技術や方法を開発して、野生生物と人間との関係を調整する具体的手法を説く1冊。
現代を生きる我々は、野生生物との付き合い方も忘れてしまったのか。
ツキノワグマとの遭遇は死傷者が出るほどの問題になり、シカやイノシシによる交通事故の被害も甚大だ。
いや、ペットの扱い方すら覚束無い。
成長しすぎたミドリガメ(アカミミガメ)を川原で目撃するようになって久しい。
ブラックバスやブルーギルがいないた溜め池なんてあるのだろうか。
熱帯魚が逞しく生き抜く川すらあるという。
本書タイトルにある“ワイルドライフ・マネジメント”とは、「野生動物の生態や行動、生物学を明らかにして、その保全と管理のための技術や方法を開発し、野生動物と人間との関係を調整する分野である」という。
上記のような実情を考えると、ワイルドライフ・マネジメントの実践は、我々に突き付けられた重要な問題と言えよう。
ワイルドライフ・マネジメントの目的は、自然との共存共栄。
2006年はツキノワグマとの遭遇が連日テレビを騒がせた。
死傷者が137人、捕獲されたクマは4,785頭にもなったという。
このような事態は毎年のことではなく、2006年ならではの事情が絡むと推測される。
2006年の秋は冬眠前のクマの胃袋を満たすブナが凶作だった。
さらにミズナラ、コナラも不作で、食料を求めたクマが人里に下りてきたのだ。
調査の結果、ブナは不定期に豊凶を繰り返すことが判明したという。
凶作のタイミングを掴めれば、クマ出没の可能性ということで警報の出しようもあるという。
問題は食料だけに留まらない。
クマの生息数自体が増加しているという。
それは里山の荒廃に加えて、ハンターの高齢化と後継者不足も関わり、今後ますますの困窮が予想されている。
生息数のコントロールでは、存続可能最小個体数の把握が重要という。
コンピューターシュミレーションで理論上の数値を割り出したところ、ツキノワグマの存続可能最小個体数は100~300頭と結論付けられたそうだ。
2006年の捕獲数から考えるとわずかな数のようだが、生息数調査でクマは少数分散するように棲息すると判明した。
ここにも問題がある。
この状況では個々の生息域で、個別に絶滅が進むことになる。
本来、クマはコリドーと呼ばれる森林回廊を移動することで、食料の確保や相互交流を図り生存を維持するという。
ただ、そんなクマの行動を理解せずに町づくりを進めたため、コリドーの分断が進行してクマとの遭遇機会が増えたのだ。
街中でのクマとの遭遇は、本来コリドーが存在したであろう、森林帯の延長線上で起こったことが両事例の因果関係を示唆される。
コリドーを保全しながらの町作りもクマと共に生きていく方法の1つであろう。
無論、クマの観察を続けて現状を把握し、近い未来の状況を予測、そして刻々と変わりゆく状況への臨機応変な対策実践が必要だ。
適切な個体数の維持を図るためにも、ハンターの育成は近い将来に急務として議論されるようになるだろう。
この事態への対応もワイルドライフ・マネジメントの範疇にある。
ワイルドライフ・マネジメントの実践は、個人の努力だけでは限界がある。
ツキノワグマに関しても、その生態のみならずブナなど植物生態の把握など、各分野の専門家の協力が必要である。
町づくりの専門家との協働も重要だ。
さらに、ハンターの育成問題は行政の協力が不可欠だ。
行政の協力は地域の生態把握においても欠かせない。
日本に棲息する大型哺乳類はツキノワグマに留まらず、ニホンジカやカモシカ、ニホンザル、イノシシそしてヒグマなどが確認される。
様々な生物が地域ごとに異なる生態を形成し、そこに人間生活が複雑に絡み合う。
その関係性を的確に把握するためには、地方自治体の把握している情報が大きな力となる。
2020年もツキノワグマによる被害が相次いだ。
それも住宅街などで被害が多発している。
この状況が特異な1年現象で収束するのか、それとも恒常化するのかは判然としない。
ただ、生態系について考えをめぐらすことが、一部の限られた人の問題ではなくなっていることを示している。
いまこそ、ワイルドライフ・マネジメントについて、改めて考えるときなのかもしれない。
ツキノワグマとの遭遇は死傷者が出るほどの問題になり、シカやイノシシによる交通事故の被害も甚大だ。
いや、ペットの扱い方すら覚束無い。
成長しすぎたミドリガメ(アカミミガメ)を川原で目撃するようになって久しい。
ブラックバスやブルーギルがいないた溜め池なんてあるのだろうか。
熱帯魚が逞しく生き抜く川すらあるという。
本書タイトルにある“ワイルドライフ・マネジメント”とは、「野生動物の生態や行動、生物学を明らかにして、その保全と管理のための技術や方法を開発し、野生動物と人間との関係を調整する分野である」という。
上記のような実情を考えると、ワイルドライフ・マネジメントの実践は、我々に突き付けられた重要な問題と言えよう。
ワイルドライフ・マネジメントの目的は、自然との共存共栄。
2006年はツキノワグマとの遭遇が連日テレビを騒がせた。
死傷者が137人、捕獲されたクマは4,785頭にもなったという。
このような事態は毎年のことではなく、2006年ならではの事情が絡むと推測される。
2006年の秋は冬眠前のクマの胃袋を満たすブナが凶作だった。
さらにミズナラ、コナラも不作で、食料を求めたクマが人里に下りてきたのだ。
調査の結果、ブナは不定期に豊凶を繰り返すことが判明したという。
凶作のタイミングを掴めれば、クマ出没の可能性ということで警報の出しようもあるという。
問題は食料だけに留まらない。
クマの生息数自体が増加しているという。
それは里山の荒廃に加えて、ハンターの高齢化と後継者不足も関わり、今後ますますの困窮が予想されている。
生息数のコントロールでは、存続可能最小個体数の把握が重要という。
コンピューターシュミレーションで理論上の数値を割り出したところ、ツキノワグマの存続可能最小個体数は100~300頭と結論付けられたそうだ。
2006年の捕獲数から考えるとわずかな数のようだが、生息数調査でクマは少数分散するように棲息すると判明した。
ここにも問題がある。
この状況では個々の生息域で、個別に絶滅が進むことになる。
本来、クマはコリドーと呼ばれる森林回廊を移動することで、食料の確保や相互交流を図り生存を維持するという。
ただ、そんなクマの行動を理解せずに町づくりを進めたため、コリドーの分断が進行してクマとの遭遇機会が増えたのだ。
街中でのクマとの遭遇は、本来コリドーが存在したであろう、森林帯の延長線上で起こったことが両事例の因果関係を示唆される。
コリドーを保全しながらの町作りもクマと共に生きていく方法の1つであろう。
無論、クマの観察を続けて現状を把握し、近い未来の状況を予測、そして刻々と変わりゆく状況への臨機応変な対策実践が必要だ。
適切な個体数の維持を図るためにも、ハンターの育成は近い将来に急務として議論されるようになるだろう。
この事態への対応もワイルドライフ・マネジメントの範疇にある。
ワイルドライフ・マネジメントの実践は、個人の努力だけでは限界がある。
ツキノワグマに関しても、その生態のみならずブナなど植物生態の把握など、各分野の専門家の協力が必要である。
町づくりの専門家との協働も重要だ。
さらに、ハンターの育成問題は行政の協力が不可欠だ。
行政の協力は地域の生態把握においても欠かせない。
日本に棲息する大型哺乳類はツキノワグマに留まらず、ニホンジカやカモシカ、ニホンザル、イノシシそしてヒグマなどが確認される。
様々な生物が地域ごとに異なる生態を形成し、そこに人間生活が複雑に絡み合う。
その関係性を的確に把握するためには、地方自治体の把握している情報が大きな力となる。
2020年もツキノワグマによる被害が相次いだ。
それも住宅街などで被害が多発している。
この状況が特異な1年現象で収束するのか、それとも恒常化するのかは判然としない。
ただ、生態系について考えをめぐらすことが、一部の限られた人の問題ではなくなっていることを示している。
いまこそ、ワイルドライフ・マネジメントについて、改めて考えるときなのかもしれない。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント

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- 出版社:岩波書店
- ページ数:125
- ISBN:9784000074858
- 発売日:2008年06月01日
- 価格:1260円
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