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※ネタバレ注意!

あの世間を騒がせた桶川ストーカー殺人事件。何で、担当の上尾署は捜査をしようとしなかったのか。

  • 桶川ストーカー殺人事件―遺言
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  • 出版社:新潮社
桶川ストーカー殺人事件―遺言
 1999年10月26日、埼玉県JR桶川駅前で女子大生猪野詩織さんが刺殺される。世間を震撼させた、女子大生ストーカー殺人事件である。ストーカーという言葉が流行になり、埼玉県警、上尾署の対応のひどさが喧伝され、私も当時警察は酷いなという印象を持った。
 その後警察は民事不介入ということで、事件にならなければ、捜査はしないということを知り、そんなもんかと思い、ではこの事件は何だったのと改めてこの本を手にとってみた。

 著者清水さんは、当時新潮社の写真雑誌「FOCUS」の専属記者だった。
この事件、刺殺事件の首謀者はストーカーをした小松和夫。しかし、実際の殺人指示者は和夫の兄、小松明夫、実行者は久保田祥史。

 実は、この3人に辿り着いたのは、著者清水さんのチーム。上尾署は不思議だった。事件は通り魔犯罪として、本来なら小松の行方を捜索するはずなのに、全く小松を追わなかった。

 清水さんチームは、色んな情報をとり、首謀は小松和夫、殺人実行者は久保田、指示者は和夫の兄明夫と特定していた。それで、久保田と明夫の出入りするアパートの部屋を見つけ、

 上尾署にも連絡した。上尾署も捜査員を張り込ませる。ところが、上尾署は明夫、久保田の出入りがあるのになかなか逮捕しないのである。全く奇妙。

 実は、被害者詩織さんは、何度も上尾署にストーカー被害の訴えをするのだが、上尾署は全く受理しない。そのうち、小松のストーカーぶりはとんでもないエスカレートして、家の近所に詩織さんを誹謗中傷するビラを大量にまき、近所の家々に貼る。父親の会社には、父親が不正をしているとのビラを大量に送り付ける。それでも、上尾署はこんなの持ってきても受理しないと拒否する。

 そこで詩織さんと父親は弁護士に相談して、小松和夫に対する告訴状を上尾署に提出する。その際、「詩織さんを殺す」と言っているテープを証拠品として提出する。

 それでやっと上尾署は告訴状を受理する。その後不思議なことが起きる。上尾署の刑事が告訴状を取り下げるよう詩織さんの家に訪れ要請する。

 こんなことは、司法制度上ありえないこと。告訴状を受理した警察は、捜査を行う義務がある。

 上尾署は、「FOCUS」が久保田と明夫の写真を載せることを掴んだのだろう。[FOCUS]販売のギリギリのタイミングで久保田と明夫を逮捕する。

 何で警察は犯人逮捕を躊躇したのか。その裏にはとんでもないことが隠されていた。告訴状を改ざんしていたのである。もし犯人を逮捕すると、改ざんが表ざたになるし、告訴状取り下げの要請を詩織さん一家にしていたことが公になる。それで犯人逮捕を躊躇していたのである。しかも、その直後主犯の小松和夫は北海道の湖に身投げして自殺していた。

 そうか。そんなことがあったのか。この本で、真相を知ってショックを受けた。

 モリカケの改ざんもひどいと思うが、市民の味方を標ぼうする警察が、告訴状を改ざんするとは絶望的である。
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  • 掲載日:2021/09/29
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