かもめ通信さん
レビュアー:
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いやはやこれはなんともはや!思わず笑ってしまうノンフィクション!!よくよく考えると笑い事ではないのだけれど……。
第三帝国NO.2のヘルマン・ゲーリングは、自身の豪邸で子ライオンを飼っていた。
この子ライオン、大きくなって手に負えなくなると、すかさず動物園に送り返され、ゲーリングの元にはまた大人しくて可愛い別の子ライオンが連れてこられるのだ。
そうした手配をそつなくこなしていたのは、自身も筋金入りのナチであるベルリン動物園園長ルッツ・ヘックだった。
しかし、ドイツで最も長い歴史を持つ「ベルリン動物園」は、第二次世界大戦でほとんどの動物を失い、壊滅的なダメージを受けることになる。
園長のヘックは、ベルリン陥落寸前に自身の危険を案じて逃亡。
瀕死の状態にあった動物園を守り、立て直していくために奮闘したのは、当時はまだ珍しかった女性の動物学者であり、動物園職員でもあったカタリーナ・ハインロートだった。
戦後、敗戦国ドイツは二つの国に分割されたが、ベルリンだけは自由主義経済を推進する英・仏・米と社会主義国家のソ連の4カ国によって分割管理されることに。
西ベルリンは東ベルリンと接しながら、その他三方もソ連統治下の東ドイツに囲まれた「陸の孤島」ともいえる状況に置かれた。
それでも当初は、占領地区の境界線は地図上だけの存在で、東ベルリン市民が西側を訪れることは可能だったのだという。
東ドイツの政権はそれを歓迎していたわけではなかったし、もちろん検問もあったのだが、「動物園に行く」という市民を止めることはできなかった。
なぜなら、東側には動物園がなかったからだ。
そんなわけで、東ベルリンにも動物園を建設する計画が持ち上がる。
西側の「ベルリン動物園」の5倍という広大な敷地を誇る「ティアパルク」は、常に建設途中でありながらも、体制の威信をかけて運営されることになったのだった。
そうなればもちろん、伝統ある「ベルリン動物園」だとて負けてはいられない。
やがて「壁」が建設されてベルリンの街が名実ともに分断された後も、ベルリンのこの2つの動物園は、かたや東ドイツにありながら政治的な活動とは一線を画し、常に動物園第一の粘り強い押しが持ち味の動物学者ハインリヒ・ダーテ、かたやドイツで最も若い動物園長となる獣医畑出身で、動物園のために人から援助をむしり取るのが大の得意というハインツ=ゲオルク・クレースという、二人の個性的な園長のもと、珍しい動物の数を競い合うなど競争を激化させていくのだった。
カタリーナ・ハインロートの悔しさを思って、キリキリと歯ぎしりをし、ドイツ語の慣用表現では「クマを送りつけよう」には「嘘八百を並べる」の意味があると知ってクスクス笑いながら、読み始めたノンフィクションは、当時の様子を伝える写真と動物や動物園に関するそれだけ拾い読みしても楽しめるぐらい細かで充実した注釈も加わって、読む者を夢中にさせる。
ちょっと想像してみて欲しい。
獣舎の建設が間に合わないからといって、子ゾウをを放し飼いにしてる動物園を。
おまけにその子ゾウときたら動物園を訪れた人間の子どもたちと一緒にかけっこをしているというのだ。
ありえない!ありえない!と思うけれどこれは実話で、この本にはちゃんと写真も載っている。
動物園をめぐる盛りだくさんのエピソードと共に、動物園と動物たち、そして動物園に魅せられた「動物園人」たちのあれこれを通じて、当時の世相や社会背景がみごとに浮かび上がってくるところもみごととしか言い様のない読み応え。
この本のことなら延々と語れそうな面白さだ。
だがしかし、「何を読んでいるのか?」と訊ねてきた若者と話をしてみると、なんだか微妙にかみ合わない。
おかしいなあと思ったら、なんと相手はベルリンの壁が東西ドイツの国境線上に築かれていたものと思っていたらしいのだ。
そこからか!そこからなのか!とゼネレーションギャップにあせったものの、大丈夫!大丈夫だ!この本の冒頭には、ちゃんと当時の地図も載っていたから!!
そんなこんなであるいはもしかすると、ベルリンの壁が築かれた当時を知る世代、壁が壊された衝撃を知る世代と、壁を知らない世代では、受け止め方も楽しむポイントも違うかもしれないが、それでもきっと、どの世代にも堪能できる面白さがあるはず。
動物好き、動物園好きのあなたはもちろん、歴史好きのあなたにも、政治談義の好きなあなたにもお薦めできる1冊だ。
この子ライオン、大きくなって手に負えなくなると、すかさず動物園に送り返され、ゲーリングの元にはまた大人しくて可愛い別の子ライオンが連れてこられるのだ。
そうした手配をそつなくこなしていたのは、自身も筋金入りのナチであるベルリン動物園園長ルッツ・ヘックだった。
しかし、ドイツで最も長い歴史を持つ「ベルリン動物園」は、第二次世界大戦でほとんどの動物を失い、壊滅的なダメージを受けることになる。
園長のヘックは、ベルリン陥落寸前に自身の危険を案じて逃亡。
瀕死の状態にあった動物園を守り、立て直していくために奮闘したのは、当時はまだ珍しかった女性の動物学者であり、動物園職員でもあったカタリーナ・ハインロートだった。
戦後、敗戦国ドイツは二つの国に分割されたが、ベルリンだけは自由主義経済を推進する英・仏・米と社会主義国家のソ連の4カ国によって分割管理されることに。
西ベルリンは東ベルリンと接しながら、その他三方もソ連統治下の東ドイツに囲まれた「陸の孤島」ともいえる状況に置かれた。
それでも当初は、占領地区の境界線は地図上だけの存在で、東ベルリン市民が西側を訪れることは可能だったのだという。
東ドイツの政権はそれを歓迎していたわけではなかったし、もちろん検問もあったのだが、「動物園に行く」という市民を止めることはできなかった。
なぜなら、東側には動物園がなかったからだ。
そんなわけで、東ベルリンにも動物園を建設する計画が持ち上がる。
西側の「ベルリン動物園」の5倍という広大な敷地を誇る「ティアパルク」は、常に建設途中でありながらも、体制の威信をかけて運営されることになったのだった。
そうなればもちろん、伝統ある「ベルリン動物園」だとて負けてはいられない。
やがて「壁」が建設されてベルリンの街が名実ともに分断された後も、ベルリンのこの2つの動物園は、かたや東ドイツにありながら政治的な活動とは一線を画し、常に動物園第一の粘り強い押しが持ち味の動物学者ハインリヒ・ダーテ、かたやドイツで最も若い動物園長となる獣医畑出身で、動物園のために人から援助をむしり取るのが大の得意というハインツ=ゲオルク・クレースという、二人の個性的な園長のもと、珍しい動物の数を競い合うなど競争を激化させていくのだった。
カタリーナ・ハインロートの悔しさを思って、キリキリと歯ぎしりをし、ドイツ語の慣用表現では「クマを送りつけよう」には「嘘八百を並べる」の意味があると知ってクスクス笑いながら、読み始めたノンフィクションは、当時の様子を伝える写真と動物や動物園に関するそれだけ拾い読みしても楽しめるぐらい細かで充実した注釈も加わって、読む者を夢中にさせる。
ちょっと想像してみて欲しい。
獣舎の建設が間に合わないからといって、子ゾウをを放し飼いにしてる動物園を。
おまけにその子ゾウときたら動物園を訪れた人間の子どもたちと一緒にかけっこをしているというのだ。
ありえない!ありえない!と思うけれどこれは実話で、この本にはちゃんと写真も載っている。
動物園をめぐる盛りだくさんのエピソードと共に、動物園と動物たち、そして動物園に魅せられた「動物園人」たちのあれこれを通じて、当時の世相や社会背景がみごとに浮かび上がってくるところもみごととしか言い様のない読み応え。
この本のことなら延々と語れそうな面白さだ。
だがしかし、「何を読んでいるのか?」と訊ねてきた若者と話をしてみると、なんだか微妙にかみ合わない。
おかしいなあと思ったら、なんと相手はベルリンの壁が東西ドイツの国境線上に築かれていたものと思っていたらしいのだ。
そこからか!そこからなのか!とゼネレーションギャップにあせったものの、大丈夫!大丈夫だ!この本の冒頭には、ちゃんと当時の地図も載っていたから!!
そんなこんなであるいはもしかすると、ベルリンの壁が築かれた当時を知る世代、壁が壊された衝撃を知る世代と、壁を知らない世代では、受け止め方も楽しむポイントも違うかもしれないが、それでもきっと、どの世代にも堪能できる面白さがあるはず。
動物好き、動物園好きのあなたはもちろん、歴史好きのあなたにも、政治談義の好きなあなたにもお薦めできる1冊だ。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:CCCメディアハウス
- ページ数:384
- ISBN:9784484181080
- 発売日:2018年09月01日
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