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はなとゆめ+猫の本棚
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映画と本では、終わり方が大きく異なる。
 映画「ティファニーで朝食を」は高校生のとき観た。しかし、全く話の内容が理解できなかった。私の家は、都会とは縁のない、田舎の百姓だった。青っ洟をいつも垂らして、下駄で学校に通う高校生。恋物語がまず全くわからなかった。更にニューヨークの社交界。

 毎週のように、しゃれたパーティが開かれ、洒脱な会話と豪華な酒がふるまわれ、美しい女性たちが、金持ちの男性に群がり、媚を売ることが繰り広げられる世界が、この世のものかとても信じられなく、画面をみてどこの世界のことだろうと溜息ばかりをついていた。

 映画は最後、ヘップバーン演じる、ホリーが可愛がっていた猫をタクシーから放り出し、主人公である僕ポールがタクシーから降りて、猫を探そうと走り出す。それを見ていたホリーが懸命にタクシーを降りて、ポールを追いかける。そして路地裏で猫をみつけたポールに追いつき、2人は雨の中でキスを交わすところで終わる。

 映画は、ホリーとポールのラブコメディとして描かれる。

 しかし、実際の小説とは全く異なる。
社交界のセレブの海の中で泳いで暮らすホーリーは何も働かず、男が貢ぐお金と高価な贈り物によってニューヨークで暮らす。一方、ポールは小説家を目指しているが、まだ一冊も世の中に作品を発表できていない貧乏遊民だ。

 物語はポール視点で描かれるので、ホーリーの本当の気持ちはわからないが、ポールは、ホーリーを心から愛しているが、ホーリーは愛してはいないように思えた。ホーリーの関心は、金持ちに取り入り、いかにお金をまきあげるかだけで、ポールなどは青臭く使い走りくらいにしか考えていないのではと思える。

 ホーリーに健気に接する男にしかみえない。

 小説でも最後、タクシーから愛する猫をホーリーが放りだし、それをポールが追いかける。ここは映画と同じだが、この場面は、実はホーリーがブラジルに去ってしまった大富豪ホセを追って飛行場にホーリーをポールが送ってゆくところ。

 小説ではホーリーはタクシーは降りず、そのままブラジルに行ってしまう。ポールは猫だけ拾って自分の部屋に帰ってくる。

 その後日本の記者からアフリカでホーリーを見たとの情報がもたらされたが、ポールと再会するようなことは無かった。

 田舎の洟垂れ小僧は、美しい音楽ムーンリバーと永遠の乙女オードリーヘップバーンに完全に心を奪われる。あのヘップバーンがこんな汚れ役をやるわけがないという刷り込み状態で見たから、実際の原作に驚くばかりだ。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6212 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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