三浦しをんのホラー小説、「白いへび眠る島」(角川文庫)。古い因習の残る拝島で、13年に一度行われる荒垣神社の大祭の日に、村を襲った怪異を描いたものだ。
主人公の前田悟史は、普段は高校に通うため、本土の高垣に住んでいる。夏休みで、島に帰ってきた悟史だが、島は大祭の準備に沸いていた。その名の通り、拝島は、神を祀る島だ。荒垣神社に祀られるその御神体は、白蛇さまとも荒神さまとも呼ばれていた。この島には、「あれ」という、名前をいうのもはばかられるような怪異に関する不気味な言い伝えがある。その「あれ」が、最近現れたというのだ。
この島には、代々神社の神主を務める神宮家の者には、背中に鱗が生えていると言われていたり、長男は島に残らなければならないが、次男以降は島から出て行かなければならなかったり、歳の近い長男同士が持念兄弟という義兄弟になったりといった、独自の言い伝えやしきたりがある。
この長男しか島に残れないということに対して、作者は一つのアイロニーを描いている。悟史は、古い因習に反発して、長男なのに島を出たいと思っているが、一方では、島を出なければならない立場なのに、島を捨てられない者もいるのだ。また、神宮家の後継ぎたる長男には、島を守護するための力はなく、その力は弟の方に受け継がれており、そのことが兄弟の反目に繋がっている。
島を襲う怪異と、島を守ろうとする悟史たちの攻防は、手に汗を握るような緊迫感に溢れている。しかし、島を守るために戦った者たちも、最後はほとんどが島を出ていく。ホラーとはいえ、凍りつきそうな恐怖を呼ぶような作品ではないが、不思議な余韻を後に残す。
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