伊与原さんがこの話を何のきっかけもなく自ら想像して書いたとしたら、もう天才と思っていたら、本を読み終わった最後に辻村深月さんとの対談が載っていて、ある定時制高校を取材したと伊与原さんが言っていたので少し安心した。
この作品NHKでテレビドラマ化して、高視聴率を記録した作品。
私の大学時代、大学生にはいなかったが、まわりで働いている人たちにはたくさん定時制高校卒業、あるいは30歳40歳で定時制高校に通っている人たちがいた。
今はどうなっているか。この物語の舞台になっている東新宿高校定時制。
教科書を開いてノートに先生の授業をまじめに聞いているのは真ん前に座っている生徒1人。しかもその生徒は70歳を超えているおじいさん。
中ごろの席には、私服の女の子たち。スマホをいじったり、電話をしている。ネイルをいじっている生徒もいる。最後尾の列には、足を机になげだし、漫画をみたり、ぶらぶらあるきまわる不良な生徒。
主人公は21歳の織田岳人。昼間はゴミ処理業者で働く。岳人はディスクレシアという学習障害を患っている。文字がゆがんで読めないのである。当然ひらがなも書けない、まして漢字などとても。ゆっくりひらがなを書いても、とんでもない字になってしまう。
仕事も面白くないし、それで完全に不良になっている。
名取佳澄16歳。障害を持っていて、保健室通いの生徒。
越川アンジェラ43歳 フィリピン料理の食堂に勤める。
長峰省造76歳 高校へゆけなかったため定時制高校に通う。
庄司麻衣 キャバクラ嬢。 そのほかアンジェラの友達マリ。
そして、34歳の担任教師藤竹叶。
物語の最初のハイライト。藤竹が生徒たちに火星の夕焼けは水色といい、実験でその水色を作り出す。これに生徒たちが感動。そして、藤竹はこの定時制高校に科学部を作り、火星のクレーターを作ろうと提案し、上記生徒たち科学部に集結する。とくに主人公の岳人の工夫と創造力と粘り強さ。そして70歳で工場現場で培った経験でクレーター製造機の原料収集から加工作業をして部品に仕上げる長
峰。この2人の我慢強さ、創意工夫、迸る情熱は読んでいて感動を呼び起こす。
そして最後日本地球惑星科学連合主催の大会高校の部に応募して優秀賞を獲得。
こんな全国大会に出場する高校に定時制高校が応募賞受賞など天地がひっくりかえるような大奇跡。まさにミラクルストーリーに感動につぐ感動。勇気と希望を与える作品伊予原新は驚愕の才能を持った作家だ。
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