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6作品収録された短篇集です。男性をコントロールしているつもりなのですが、実際には男性にコントロールされている女性が登場する話が多いです。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
青ひげの卵
1939年生まれのカナダの作家マーガレット・アトウッドは、『侍女の物語』(1990年)が有名で、このサイトでも高い評価を得ています。その本も、ずっと私のツンドク山脈に入っているのですが、今回は1993年刊の本書を読んでみました。以前に読んだ日本独自編纂の『ダンシング・ガールズ』の印象が良かったこともありますが、ちょっと物足りなかったというのが正直な感想です。ただ、本書を読む順番が悪かったのかとも思います。どんな本でも、初めて読む時は、ぞの直前に読んだ別の本を引きずるのは避けられないことでしょうが、本書の場合もそれは当てはまったようです。と言うのは、直前に読んだ『夜が明けたら』と『海の牙』が強烈な内容で、そのパワーに圧倒された後でしたので、それに比べると、本書はややおとなしいという印象を持ってしまったのです。そういう影響下にあった読書になってしまったという点は、ご容赦ください。


6作品収録されていますが、男性をコントロールしているつもりでも、実際には男性にコントロールされている女性が登場する話が多いです。

冒頭の『ルゥルゥ、もしくは<言語>家庭生活』が、その典型です。ヒロインはルゥルゥという陶芸家です。自分の趣味を出したものだけでなく、弟子を使って大量生産の品も製造していて、収入は潤沢でした。ところが、それをいいことに、別れた夫たちや有象無象の自称詩人たちが大勢彼女の家に同居していてヒモになっていました。彼らは、ルゥルゥが英単語に疎いことを知っていて、ちょっと難しい単語を並べて、いつも彼女をからかっています。そんな彼女の過去と日常と、彼女のちょっとした新しいアヴァンチュールが語られる作品です。ルゥルゥが、自分が結局のところ男たちの言いなりになっていることをあまり自覚していない点が、ちょっとイラつかせます。また「ルゥルゥ」という名前ですが、おそらくフランク・ヴェーデキントの戯曲『パンドラの箱』(1904年)のヒロイン、ルルから来ています。ルルも、男たちの間を自由奔放に渡り歩きながらも、最後には自滅するというヒロインですから、作者の意識にはあったことでしょう。

もう一つ挙げるなら、『青ひげの卵』になります。心臓外科医のエドと結婚したサリーの視点で語られる話です。エドにとっては三度目の結婚なのですが、「エドはそれほど愚かだから自分が愚かであることすらわからない」と思っていることからしても、実は「サリーはそれほど愚かだから自分が愚かであることすらわからい」ことが、次第に明らかになる展開を見せます。

そして他の作品も、けっしてつまらないというわけではないのですが、どうもインパクトに欠けるのは、ヒロインたちがあまり賢く思えないからでしょう。男性優位の話を、そうだと意識していない女子の視点から描いているので、ヒロインたちの吸引力が弱いように感じてしまいます。

ところで、私がアトウッドを読んでいて連想するのは、エリザベス・ボウエン(1899-1973)なのですが、それは主に謎を謎のまま提示するスタイルによるものです。ただ、謎を説明する必要はないのですが、こちらの感情をざわつかせてくれないと面白い味に欠けるわけで、その点でも、やや不満な内容でした。

というわけで、この作家は、やはり『侍女の物語』を読んでみる必要がありそうです。
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  • 掲載日:2026/05/27
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この書評へのコメント

  1. ef2026-05-27 05:55

    『侍女の物語』は積読山脈に埋もれているのですね。体調と気持ちが合った時にこれは是非! 絶対的お勧めです!(続編の『誓願』もありますが、まずは『侍女の物語』から)。

  2. hacker2026-05-27 08:00

    はい、次は『侍女の物語』を読みます!

  3. ef2026-05-27 08:22

    楽しみだなぁ。

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