>>これでわかったでしょう・・・、これからは、夜にひとりで外を歩けないのは男のほうよ。こわがらなくっちゃいけないのは男のほうなのよ。
この小説の世界観は強烈だ。
女性が支配者なのだ。
男女平等社会と言っても中東では男尊女卑の価値観は続いている。
トランプのような破廉恥な爺さんが世界を支配している。
これは女性にとって良くない世界ではあるが、男女の立場が逆転したら、というか女性が世界の支配者だったらというディストピアな世界がここでは展開されています。
その世界は男性優位社会よりも残忍で生きづらいものでした。
具体的には、女だけが電気を発するビリビリを手に入れた世界です。うる星やつらのラムちゃんが女性で、ダーリンが男性という感じでしょうか。浮気をするとおしおきなのだ・・・・。
この世界はそんな甘いものではない。
現実的には、high technologyがあるので、この小説世界は不可能ですが、とにかくエグイ。
ただ、この小説は、この世界観の中で書かれた小説という、小説の中に入れ子のような形での小説ということになり、それが最後のナオミとニールの書簡のやりとりにあります。かなり作りこまれた世界観ということです。
男性優位社会であるイスラム教の諸国などでは一夫多妻制があったり、妻の顔をターバンというのか名前は知らんか゛布で隠さないといけないという差別があったり、男女で職業差別があったり、女は家で家事という専業主婦おしつけが常態化されていますが、それでも基本、夫は妻や子のためまじめに働き、生命がけで守るものです。
しかし本書の女性が強い社会では、ビリビリ攻撃が可能という異能により、女は男を隷属、生殺与奪の権すら持つような理不尽な世界なのです。とくに女性大統領の奇行はむかつきました。やりたい放題です。
女たちの男性に対する考え方も異常です。
>>遺伝的に完ぺきな男がいれば・・・子供は作れる。とすれば、それ以外の男が何で必要かね。われわれは皆殺しにされるに違いない。生かされる男なんぞ百人に一人、たぶん、千人に一人もいなくなるぞ。
実際、ゲーム感覚で男たちは殺害されています。
イスラム教の世界がいくら男尊女卑であると言っても、女性に対してある程度のリスペクトはあるのであり、この世界はそれは皆無でして、人間、男を虫程度にしか認識していないのです。
この物語の本質を問うような場面がある。
報道家である黒人の男が、ある国に潜伏し取材した内容を本国の女性記者に送ると、彼が死んだと誤解して、その記事を自分が取材したものとして本にした。彼の名はいっさい無視された。パワーの強い犯罪組織の女の弟が姉を騙し身体からパワーの源である部位を手術で抜き取り自分に移植した。
この二つの出来事は、信頼への裏切りとして描かれている。
これは女性たちが男を冗談半分でレイプしたり殺害する場面を象徴しているとも思う。
>>なぜ、あんなことをしたんだろう・・・・、やろうとしたら、できたからだ。
これだと思った。
人間は個人では、そこまで悪になりきれないが、過去に人類は鬼畜のような行為をやっている。これは集団ヒステリーに近い状態に発生し、洗脳に近い陶酔の中で発生する。ユダヤ人の大量虐殺や、原爆投下、特攻隊の特攻。モンゴル軍のせん滅作戦もその類である。
やろうとしたら、できたから
やったということだと思う。全員がユダヤ人を死ねと思っていたとは思えない。全員が日本人は死ねとも思ってなかったと思う。この作品の中では男を殺害する遊び半分でという場面もそうだと思う。人は集団にナルと得体のしれない悪が宿る。それをファシズムと呼び人もいるが、集団心理の何かなのかもしれん。
それはとても怖い。
人間にはこういう残酷さがあるんだということを、僕たちは知っておかねばならない。本書はそれを提示していたように感じた。とても良い小説だと思いました。
2026 4 8
この書評へのコメント