小川洋子さんの物語の多くは死が自然にそこにいる。
これは、とある小さなアーケードの店主や訪れる客のかけがえのない思いの品や体験の物語。10編からなる短いストーリー。主人公の父はここの大屋さん。幼い頃から慣れ親しんだ空間です。
アーケードというより誰にも気づかれないまま、何かの拍子にできた世界の窪み、と表現したほうがいいのかも知れないとあるように、何かを背負った品々をそれを必要としているたった一人を辛抱強く待ち続ける。
・衣装係さん・百科事典少女・兎夫人・輪っか屋・紙店シスター・ノブさん・勲章店の未亡人・遺髪レース・人さらいの時計・フォークダンス発表会
当たり前だけど人それぞれ大切なものは異なる。こんなものが?というような古ぼけたあるものが、とてつもなく大事だったりするものだ。死を重ねると更に一層思いが高まるのだろう。なにか一歩先に出るというか、それはもう異次元に行くというか物にも繋がりがあって何かが宿るのだろうか不思議な体験をした感じ。
私は「紙店シスター」の話が好きだった。紙店シスターのお店は文房具やレターセットなどを扱うお店。中古の絵はがきなども扱う。差出人不明で行き場を失ったものが国内外を問わずコレクター商品として並ぶ。
療養中の母を訪ねた病院で40年も働く住み込の雑用係のおじさん。郵便の仕訳も仕事のひとつ。身内も居ない彼は架空の姉からの絵はがきを自作自演している。幼い主人公は字も書けないくせに咄嗟に自分が葉書を出し、そして一緒にそれを仕分けようと約束する。
しかしその約束は約束は守られなかった。字も書けないし母が亡くなったから療養施設に行くこともなくなったからだ。
おじさんはずっと待ってただろうか。
最後の章で主人公のお父さんが映画館の火事で亡くなった経緯が語られる。お父さんとのデートの日にそれらは起こった。
実は主人公は同じタイミングで亡くなってたのかなぁとあれっ?と。そこの解釈を読まれた方にお聞きしたいです。
期待を裏切らずに死と近い世界を描いてくれました。主人公が幼いお陰でグロテスクな表現もなくとても読了感の良い物語だと思います。
おまけ
こんなにウケツケナイ巻末の解説文は始めて。載せないほうが良かったのでは…
(ブクレコ 20160504)
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