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ゆうちゃん
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ゴローが狩りに行って城に連れ帰った妻がメリザンド。メリザンドは夫ゴローよりその弟ペレアスとの方が話が合う。ペレアスは兄夫婦の間に波風を立てたくないので旅立とうとするが・・。
ゴローはアルモンドの国王アルケルの孫。狩りで森に迷い込むと泉の傍に泣いている美しい女性が居た。メリザンドである。ゴローはメリザンドを妻にして祖父アルケル王の城に連れ帰った。メリザンドは城に来ると、ゴローの弟ペレアスと親しくなる。最初はふたりの関係に寛大だったゴローだが、ふたりの仲が深くなってゆくのに気づいてゆく。ペレアスはメリザンドとこれ以上深みにはまらないように、旅に出たいと言うが、アルケル王はゴローとペレアスの父の病状が思わしくない、ということを理由に旅立ちをなかなか許可しない。旅の許可が漸く出て出発する前の晩、ペレアスはメリザンドに最後にふたりで会いたいと言う。ゴローが寝てからメリザンドは城門を出て、ペレアスの待つ盲人の泉に向かう。

この戯曲は、メリザンドとペレアスの悲恋の話と読めるが、説明が非常に少なく、全体にふわっとした話である。メリザンドとは誰?彼女は泉のほとりでなぜ泣いていたのか、そしてゴローには何故嘘をつくのか。城から遠くに見える羊、薔薇の花、泉、と無関係な取り合わせが効果的で、話を夢のように印象付ける。ところどころに象徴派のカルロス・シュワッブの挿絵がある(検索するならカルロス・シュヴァーベの方が、通りが良さそう)。それも夢の印象を強調する。本書は珍しくフランス語の原典と対訳で出版されているが、またこのフランス語の原典と日本語の併記が、やはり夢の印象を強くする(自分はフランス語がよくわからないので)。そして戯曲には「父」とだけ書かれ、姿を見せない父親の存在。彼の病状が良くなると話が大きく転換する。フロイト的には父親は検閲の存在である。
解説を読むと、フーケの「ウンディーネ」との関連が強いとあった。確かに「ウンディーネ」を踏まえると、メリザンドが誰か、彼女がする種々の仕草の説明になる。これはこれでこの戯曲を理解する上で重要なポイントと思う。解説にも夢のような話だと言う点が書かれているがフロイト的分析をすれば、もっと深い読みが出てきそうである。

本書はドビュッシーが歌劇にしている。音楽における印象派の巨匠。彼もふわっとした音楽を書くのでまさにうってつけである。音楽的にはピアニッシモが多く、歌劇でありながら、公演よりは録音に向いた作品だと聞いたことがある。これもドビュッシーが原作を尊重したからだろう。残念ながら、この歌劇には、人口に膾炙したアリア等はない。

むしろフォーレがこの戯曲を元に作曲した組曲の方が有名。
フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」から
「シチリアーノ」
(フルートの名曲です)
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ゆうちゃん
ゆうちゃん さん本が好き!1級(書評数:1689 件)

神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。

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