hackerさん
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「かもいに届くような身長」の兄の雄太郎と「おかめどんぐりみたいな、ずんぐりむっくりの体」の妹の悦子、仁木兄妹が探偵役として活躍する、仁木悦子の江戸川乱歩賞をとったミステリー・デビュー作です。
1957年に刊行された本書は、その年より公募制となった江戸川乱歩賞受賞ということもあり、江戸川乱歩が作者のことを「日本のアガサ・クリスティ」と呼んだこともあり、作者の仁木悦子(1928-1986)が寝たきりで学校教育を受けずに、兄から勉強を習った若い女性ということもあって、発表当時は大変評判となった作品だそうです。私が最初に読んだのは中学生の時ですが、あっと驚くトリックや犯人にばかりに目が行っていた頃でもあったため、その時の印象はさほど強いものではありませんでした。その後、社会人になってから一度再読し、ずいぶん違う目でこの作品をみることができ、今回はそれから、更に年月が経ってからの再読になりました。
本書は、友人の紹介で、箱崎医院という外科医の二階の病室の一つを間借りすることになった、植物学専攻の大学生、兄の仁木雄太郎と、音楽大学生の妹の悦子が、そこで遭遇した連続殺人事件の謎を解くというものです。
正直なところ、現在の視点のみならず、当時の視点からも、トリック自体に目新しいものはないですし、ちょっと無理なトリックかなとも思うのですが、この作者の特徴である伏線の張り方と、謎解きへのヒントの配置の仕方は、見事なものだと思います。これが、本作の最大の魅力でしょう。それと、三人が殺されるという事件にもかかわらず、陰惨な雰囲気が漂わない(横溝正史だったら大変です)というのも印象的で、これはやはり作者の品が感じられる文章力と、仁木兄妹の明るいキャラクタのおかげでしょう。江戸川乱歩が高く評価したというのも分かります。
動機に関しても現在の感覚では無理と感じるかもしれませんが、発表当時の感覚を多少とでも知る私には理解できます。ただ、ネタバレになるので、その理由を述べることはご容赦ください。
優れた本格ミステリーというのは、犯人や動機を知っていても、再読に耐えるものですが、本書もそういう一冊です。
本書は、友人の紹介で、箱崎医院という外科医の二階の病室の一つを間借りすることになった、植物学専攻の大学生、兄の仁木雄太郎と、音楽大学生の妹の悦子が、そこで遭遇した連続殺人事件の謎を解くというものです。
正直なところ、現在の視点のみならず、当時の視点からも、トリック自体に目新しいものはないですし、ちょっと無理なトリックかなとも思うのですが、この作者の特徴である伏線の張り方と、謎解きへのヒントの配置の仕方は、見事なものだと思います。これが、本作の最大の魅力でしょう。それと、三人が殺されるという事件にもかかわらず、陰惨な雰囲気が漂わない(横溝正史だったら大変です)というのも印象的で、これはやはり作者の品が感じられる文章力と、仁木兄妹の明るいキャラクタのおかげでしょう。江戸川乱歩が高く評価したというのも分かります。
動機に関しても現在の感覚では無理と感じるかもしれませんが、発表当時の感覚を多少とでも知る私には理解できます。ただ、ネタバレになるので、その理由を述べることはご容赦ください。
優れた本格ミステリーというのは、犯人や動機を知っていても、再読に耐えるものですが、本書もそういう一冊です。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:ポプラ社
- ページ数:302
- ISBN:9784591116777
- 発売日:2010年03月10日
- 価格:620円
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