ゆうちゃんさん
レビュアー:
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米人ジョーダンは、第二次世界大戦初期、義勇兵としてファシスト軍と内戦中のスペインの共和派政府軍に身を投じた。彼の任務は一緒に行動するパルチザン達も危地に陥れる困難な作戦の実行だった。
映画化されたヘミングウェイの代表作。
第二次世界大戦の直前、スペインは人民政府(共和派)とフランコ将軍(ファシスト派)に分かれて内戦が始まっていた。アメリカ人のスペイン語講師ロバート・ジョーダンは、共和派の義勇兵としてスペインにやってきた。1936年5月、彼はゴメス将軍の指示で、案内人アンセルモと共に、橋の爆破のために山岳地方のパルチザンの許にやってくる。この地方を仕切っているパルチザンは、パブロとその妻ピラールの部隊、そしてやや離れた場所にいるサンチャゴ率いる部隊、計17人と馬9頭だった。
パブロは、数か月前にファシスト側の機関車を襲った成果を挙げた英雄の筈だった。因みに、その列車襲撃の時にファシストたちによって護送されていたマリアが救出され、今はパブロの部隊と共にいる。マリアの父は共和派として処刑されたことが後でわかるし、マリアとジョーダンはお互いに一目ぼれし、短い期間で激しい恋に落ちる。
パブロは任務の内容が金にもならない橋の爆破と聞いて乗り気にならない。おまけにゴメス将軍が計画しているセゴビア地方への攻勢をかける作戦全体との関係で、橋の爆破は早朝にしなければならない。真夜中ならまだしも、早朝の爆破では、パルチザンたちが逃げる間に陽が昇る一方で、自分たちを敵に晒すことになり全く不都合である。更に、パブロにとって、自分らの存在を暴き、慣れたこの山から追い出されるような作戦は迷惑至極である。案内人のアンセルモやパブロの妻ピラールは芯からの共和派でジョーダンの計画を忠実に実行しようとするし、他のメンバーも同様だったが、目端が利き、頭の良いパブロが後ろ向きでジョーダンの任務の遂行は難しくなる。到着翌日に訪ねて行ったサンチャゴは、もちろん任務に忠実だったが、彼の手下で信用できる者は、少ないと言われた。
到着二日目の晩、全く季節外れの大雪が降りだした。パブロがパルチザンの隠れ家の洞窟の外に行った隙に、相変わらず計画に乗り気にならない彼を皆で殺す相談を始める。だが、そんなことをとっくにお見通しのパブロは洞窟に戻り、吹雪がやみそうだと言うことを理由に計画に積極的になるのだが・・。
三人称小説なのだが、ジョーダンを始め各人の心情だけはわざわざ取り出して書かれている。ジョーダンが恐れるのは任務が遂行できなくなることだけだった筈が、実は彼はパブロの言うことも実によくわかっている。
自分が橋を爆破することで、好意を持ったピラールやマリアを危険に巻き込む。その命令が何をもたらすか、つまり彼らを窮地に追い詰めると知りながら、それを実行しなければならない。その辺が、単なる任務遂行の小説ではなくしている。
スペイン各地では共和派とファシストたちの戦いが繰り広げられ、命の価値はどんどん下がっている。
もし、共和主義の信奉者なら、そんな犠牲は何とも思わないだろう。それ故、彼の義務感は、共和主義に殉ずると言う単純に政治的なもの、とも言えないように思える。
反戦小説的な場面は少ないが、「西部戦線異状なし」に共通する心情が下記にあった(「西部戦線異状なし」も必ずしも反戦小説とは言えないが・・・)。アンセルモが雪の中、橋の向こうの小屋にこもる歩哨を見張っている場面である。
敵も味方も現場で戦争をする兵士たちは同じ人間である。
第二次世界大戦の直前、スペインは人民政府(共和派)とフランコ将軍(ファシスト派)に分かれて内戦が始まっていた。アメリカ人のスペイン語講師ロバート・ジョーダンは、共和派の義勇兵としてスペインにやってきた。1936年5月、彼はゴメス将軍の指示で、案内人アンセルモと共に、橋の爆破のために山岳地方のパルチザンの許にやってくる。この地方を仕切っているパルチザンは、パブロとその妻ピラールの部隊、そしてやや離れた場所にいるサンチャゴ率いる部隊、計17人と馬9頭だった。
パブロは、数か月前にファシスト側の機関車を襲った成果を挙げた英雄の筈だった。因みに、その列車襲撃の時にファシストたちによって護送されていたマリアが救出され、今はパブロの部隊と共にいる。マリアの父は共和派として処刑されたことが後でわかるし、マリアとジョーダンはお互いに一目ぼれし、短い期間で激しい恋に落ちる。
パブロは任務の内容が金にもならない橋の爆破と聞いて乗り気にならない。おまけにゴメス将軍が計画しているセゴビア地方への攻勢をかける作戦全体との関係で、橋の爆破は早朝にしなければならない。真夜中ならまだしも、早朝の爆破では、パルチザンたちが逃げる間に陽が昇る一方で、自分たちを敵に晒すことになり全く不都合である。更に、パブロにとって、自分らの存在を暴き、慣れたこの山から追い出されるような作戦は迷惑至極である。案内人のアンセルモやパブロの妻ピラールは芯からの共和派でジョーダンの計画を忠実に実行しようとするし、他のメンバーも同様だったが、目端が利き、頭の良いパブロが後ろ向きでジョーダンの任務の遂行は難しくなる。到着翌日に訪ねて行ったサンチャゴは、もちろん任務に忠実だったが、彼の手下で信用できる者は、少ないと言われた。
到着二日目の晩、全く季節外れの大雪が降りだした。パブロがパルチザンの隠れ家の洞窟の外に行った隙に、相変わらず計画に乗り気にならない彼を皆で殺す相談を始める。だが、そんなことをとっくにお見通しのパブロは洞窟に戻り、吹雪がやみそうだと言うことを理由に計画に積極的になるのだが・・。
三人称小説なのだが、ジョーダンを始め各人の心情だけはわざわざ取り出して書かれている。ジョーダンが恐れるのは任務が遂行できなくなることだけだった筈が、実は彼はパブロの言うことも実によくわかっている。
自分がこれからすることを考えれば(本当なら)好意を持たない人達を使わねばならない(301頁)
自分が橋を爆破することで、好意を持ったピラールやマリアを危険に巻き込む。その命令が何をもたらすか、つまり彼らを窮地に追い詰めると知りながら、それを実行しなければならない。その辺が、単なる任務遂行の小説ではなくしている。
スペイン各地では共和派とファシストたちの戦いが繰り広げられ、命の価値はどんどん下がっている。
人々がやっとの思いでこういう(肉親が殺されると言う)話をするのを幾度見ただろうと思った。だが最後に報告されるのは「死んだ」と言う一言だ(249~250頁)
もし、共和主義の信奉者なら、そんな犠牲は何とも思わないだろう。それ故、彼の義務感は、共和主義に殉ずると言う単純に政治的なもの、とも言えないように思える。
もし戦争に負けたら共和主義を信じるこれらの人には悲惨な運命が待っている(303頁)
反戦小説的な場面は少ないが、「西部戦線異状なし」に共通する心情が下記にあった(「西部戦線異状なし」も必ずしも反戦小説とは言えないが・・・)。アンセルモが雪の中、橋の向こうの小屋にこもる歩哨を見張っている場面である。
見張っている相手も同じ人間だと思った。もし敵で無ければ、戸をたたけば歓迎されるのだろう(356頁)
敵も味方も現場で戦争をする兵士たちは同じ人間である。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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