本書に収録されているのは以下の6作品
・ボヘミア王家のスキャンダル
・赤毛連盟
・花婿の正体
・五つぶのオレンジの種
・ゆがんだ唇の男
・まだらの紐
先日読み終えたばかりの『シャーロック・ホウムズまだらのひも』と重複している作品が2作あったが、翻訳文の語り口の違いを楽しむなどして読み飛ばさずに読了。
「ボヘミア王家のスキャンダル」では、噂に名高いアイリーン・アドラーの登場だ。
あれ、この話、知っているぞ。
あーそうか!彼女がそうだったのか!!
(といまさらながら。)
「花婿の正体」も読んだことがあるような気がするが、あるいはこれは、オチが予想できたせいかも。
全く覚えが無く軽い衝撃を受けたのは「五つぶのオレンジの種」。
これって、なにか深読みすべきなのかしら??
巻頭にはコナン・ドイルのポートレートや原書の挿絵、1900年頃のベイカー街の様子などマニアックな写真が数点収録されているのも売りの一つか。
巻末に収録された14ページに及ぶ訳者解説は、ホームズものの魅力から、翻訳の魅力までと、かなり熱い。ちなみに本書に収録されている6篇を選んだ理由は、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを創造した時期、どんなにはげしい創造への意欲にかられていたか、作家としての幸運を若い読者に知ってもらいたかったからだという。
訳者解説の後にもう1つ、「鑑賞 ホームズ物語--模倣されない原点」と銘打った作家高橋克彦氏が寄せた一文が掲載されていてこちらもなかなか興味深かった。
氏によれば
ホームズの短篇が魅力的だが、長篇は面白くない。のだそうだ。
一般に長篇の場合、物語を支えているのは主人公の魅力だが、ホームズには長篇を飽きずに読ませるだけの人物的魅力がないというのだ。
無味乾燥な叙述が続くので短篇でよほどホームズに慣れ親しんでからでないとつらいとまで言っているのだが、その一方で短篇では逆に、ホームズのその性格がプラスに作用するのだとか。
うーむ。どうなのかしら。
このあたりのことは、もう少し、ホームズ作品を読み進めてみないと真偽のほどはわからないか。
とはいえ、髙橋氏、ホームズのいやったらしい性格は悪の典型で、江戸川乱歩の怪人二十面相やモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンに通じるものがあるなどと書かれておられるのが、どうにもひっかかる。
なんですと!?ホームズがわが永遠の恋人ルパンに似ているですと!?
なんだか妙なところもひっかかって、私のホームズ探訪にますます拍車がかかるのだった……。




本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
- この書評の得票合計:
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|---|---|---|
| 参考になる: | 18票 | 
この書評へのコメント
- ゆうちゃん2020-05-21 21:20「ホームズの短篇が魅力的だが、長篇は面白くない」は確かにそんな意見はあると思います。「バスカビル家の犬」を除くと、ホームズの3つの長編は、事件の部分は実際には短編で、犯行の動機を遡ることで長編の体裁になっています。それに比較して短編はピリッとしまった感じで面白いですね。「五つぶのオレンジ種」は確かに仰る通り、この結末は・・。自分の初読は中学生の時でしたが、トリックを捻り出せずにこんな作品になってしまったのかなぁ、と思いました。 
 かもめ通信さんが、ホームズもので結構未読の作品があるとは驚きでした。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- かもめ通信2020-05-22 12:45子どものころからルパン一筋に生きてきたもので(*^^*ゞ 
 
 名探偵と言えば、ポアロとマープルは10代の頃、
 片っ端から読んだ記憶がありますが、
 エラリー・クイーンもバンコラン様も、
 本が好き!を通じて初読みしたクチだったりします。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- ムーミン2号2020-05-24 08:38ルパン作品は子どもの頃に翻案もので読んだ印象なので的外れかもしれませんが、短編はあまり面白くなかった記憶があります。ルパンの超人的能力は、時に物語の都合に合わされていて、子ども心に「そんなことできるのぉ?」なんて思いながらも楽しんでいました。何もかもが数学の証明のように理路整然と推理される作品より、どこか緩めのルパン翻案ものがワタシには合っていたようです。その流れで言えば、エラリー・クイーンは一作だけでもう十分で、ワタシにはクリスティが創造したポアロやミス・マープル、そして何よりトミーとタペンスが好きです。少しだけかじったチェスタトンのブラウン神父も魅力的。 クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- oldman2020-06-02 08:17お祖父様の言うとおり、僕もルパンは推理小説というより冒険小説の色合いが強い感じがします。 
 
 それともう一点、これは僕の感覚ですがルルーもルブランもシムノンもシャプリソもどちらかというと苦手なんですね。
 それで「その女アレックス」は評判は聞いていたんですが、☝️を出すのを躊躇っていました。
 ルメートルは面白かったので、「食わず嫌いだったかな?」とも反省はしています。
 ただ、冒険小説はユーゴーやデュマ、バルザックなどは面白く読めるので、フランス嫌いでは無いとは思っているんですが……
 
 ルブランが評判の高かったホームズを自分の小説に登場させましたが、ドイルから「使用しないで……」との手紙を貰ったという話があります。
 
 その後ルブランはSherlock Holmesのアナグラムで、Herlock Sholmès(エルロック・ショルメ)を登場させますが、あまりパッとしない状態です。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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- 出版社:集英社
- ページ数:292
- ISBN:9784087520316
- 発売日:1992年11月20日
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