書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

かもめ通信
レビュアー:
勝手にホームズ祭第2弾。
先日読んだ〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ――偶像を作り出した人々の物語が、とても面白かったので、ひとりひっそりはじめたホームズ祭、第2弾。

本書に収録されているのは以下の6作品
・ボヘミア王家のスキャンダル
・赤毛連盟
・花婿の正体
・五つぶのオレンジの種
・ゆがんだ唇の男
・まだらの紐

先日読み終えたばかりの『シャーロック・ホウムズまだらのひも』と重複している作品が2作あったが、翻訳文の語り口の違いを楽しむなどして読み飛ばさずに読了。

「ボヘミア王家のスキャンダル」では、噂に名高いアイリーン・アドラーの登場だ。
あれ、この話、知っているぞ。
あーそうか!彼女がそうだったのか!!
(といまさらながら。)

「花婿の正体」も読んだことがあるような気がするが、あるいはこれは、オチが予想できたせいかも。

全く覚えが無く軽い衝撃を受けたのは「五つぶのオレンジの種」。
これって、なにか深読みすべきなのかしら??

巻頭にはコナン・ドイルのポートレートや原書の挿絵、1900年頃のベイカー街の様子などマニアックな写真が数点収録されているのも売りの一つか。

巻末に収録された14ページに及ぶ訳者解説は、ホームズものの魅力から、翻訳の魅力までと、かなり熱い。ちなみに本書に収録されている6篇を選んだ理由は、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを創造した時期、どんなにはげしい創造への意欲にかられていたか、作家としての幸運を若い読者に知ってもらいたかったからだという。

訳者解説の後にもう1つ、「鑑賞 ホームズ物語--模倣されない原点」と銘打った作家高橋克彦氏が寄せた一文が掲載されていてこちらもなかなか興味深かった。
氏によればホームズの短篇が魅力的だが、長篇は面白くない。のだそうだ。
一般に長篇の場合、物語を支えているのは主人公の魅力だが、ホームズには長篇を飽きずに読ませるだけの人物的魅力がないというのだ。
無味乾燥な叙述が続くので短篇でよほどホームズに慣れ親しんでからでないとつらいとまで言っているのだが、その一方で短篇では逆に、ホームズのその性格がプラスに作用するのだとか。

うーむ。どうなのかしら。
このあたりのことは、もう少し、ホームズ作品を読み進めてみないと真偽のほどはわからないか。

とはいえ、髙橋氏、ホームズのいやったらしい性格は悪の典型で、江戸川乱歩の怪人二十面相やモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンに通じるものがあるなどと書かれておられるのが、どうにもひっかかる。
なんですと!?ホームズがわが永遠の恋人ルパンに似ているですと!?
なんだか妙なところもひっかかって、私のホームズ探訪にますます拍車がかかるのだった……。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

読んで楽しい:21票
参考になる:18票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2020-05-21 09:01

    だいぶ前に読み終えていたのに,レビューを書くのがすっかり遅くなってしまって…。

  2. ゆうちゃん2020-05-21 21:20

    「ホームズの短篇が魅力的だが、長篇は面白くない」は確かにそんな意見はあると思います。「バスカビル家の犬」を除くと、ホームズの3つの長編は、事件の部分は実際には短編で、犯行の動機を遡ることで長編の体裁になっています。それに比較して短編はピリッとしまった感じで面白いですね。「五つぶのオレンジ種」は確かに仰る通り、この結末は・・。自分の初読は中学生の時でしたが、トリックを捻り出せずにこんな作品になってしまったのかなぁ、と思いました。
    かもめ通信さんが、ホームズもので結構未読の作品があるとは驚きでした。

  3. かもめ通信2020-05-22 12:45

    子どものころからルパン一筋に生きてきたもので(*^^*ゞ

    名探偵と言えば、ポアロとマープルは10代の頃、
    片っ端から読んだ記憶がありますが、
    エラリー・クイーンもバンコラン様も、
    本が好き!を通じて初読みしたクチだったりします。

  4. ムーミン2号2020-05-22 22:03

    ホームズ・ファンではないですが、短編の方に魅力を感じます。個人的には「赤毛連盟」はホームズ作品の中では(個人的に)上位に入る作品です。そういえば、ルパン作品は長編が多っかたような・・・。

  5. かもめ通信2020-05-24 05:15

    確かにルパンは(短篇もありますが)長編が多いかも。
    推理以上に人の魅力で読ませるタイプの作品も。
    登場人物のうち、誰がルパンかわからない作品の場合は、一番魅力的な人物がルパンですし!(←個人的な感想です。)

  6. ムーミン2号2020-05-24 08:38

    ルパン作品は子どもの頃に翻案もので読んだ印象なので的外れかもしれませんが、短編はあまり面白くなかった記憶があります。ルパンの超人的能力は、時に物語の都合に合わされていて、子ども心に「そんなことできるのぉ?」なんて思いながらも楽しんでいました。何もかもが数学の証明のように理路整然と推理される作品より、どこか緩めのルパン翻案ものがワタシには合っていたようです。その流れで言えば、エラリー・クイーンは一作だけでもう十分で、ワタシにはクリスティが創造したポアロやミス・マープル、そして何よりトミーとタペンスが好きです。少しだけかじったチェスタトンのブラウン神父も魅力的。

  7. かもめ通信2020-05-24 22:14

    このサイトを通じて皆さんのお話を伺うたびに、あれも読んでいないし、これも読んでいないし……で、私ってこれまでいったいなにを読んできたのだろう?と思うことがしばしば(^^ゞ

    でもまあ、これから出会う楽しみがあるのだからと思い直して、ほとんど読んだおぼえがないトミーとタペンスも読みたい本のリストにいれます!

  8. Jun Shino2020-05-27 11:14

    こんにちは。私的には、ルパンの高潔さに比べると、ホームズは自堕落なとこもたくさんある印象ですね。。ファンにはそれが魅力だったりするんですが。

    ホームズの4つの長編は、間に長い別物語が入るのが2つ、途中で犯人が分かっちゃうのが1つ、確かに短編に比べるとドキドキ感は少ないかも。でも私は「四つの署名」「バスカヴィル家の犬」が大好きです。ホームズとワトスンの出会い、「緋色の研究」も。

    短編は「青いガーネット」「名馬シルヴァー・ブレイズ号」とか好きですね。。

  9. かもめ通信2020-05-27 13:04

    もしかして,もしかすると,ホームズよりルパンの方が人気者!?と思わず頬が緩む昼下がりに,こんにちは!

    ようやく地元図書館が再開したので,今度はホームズの長篇にチャレンジしてみようかと思っています。
    などといいつつ,先に恋しいルパンに会いに行ってしまうかもしれませんが(^_^)

  10. Jun Shino2020-05-27 13:30

    余談ですが、ウチの子は「なに、ホームズって麻薬打ってるの?あーなんかイメージわる~!」と言ってました。

  11. oldman2020-06-01 08:21

    うちの娘はこの前はじめてルパンを読んで、「なにが面白いのかわからん!」と怒っていました。親子揃ってイギリス贔屓です。

  12. かもめ通信2020-06-01 11:32

    娘さん,いつもながら手厳しいw
    これね,前々から思っていたのですが,
    ルパンファンはホームズをけなさないけれど,
    ホームズファンはルパンをこきおろすってパターンが多い気がするのは気のせい?
    私がホームズをあまり読んでこなかった一因は,
    周りのホームズファンが私の(!)ルパンを悪く言っていたからだったような気もw

  13. Jun Shino2020-06-01 12:16

    私はあんまり聞いたことないですが、
    「だってルパンはしょせんどろぼうじゃない?」とかですか?笑
    「ルパンはさ、おフランスざあますから」とか?笑

  14. かもめ通信2020-06-01 12:32

    そうですねえ。
    ルパンものは「論理的ではない」とか
    「感傷的だ」とかいう人は結構いましたねw

    明治生まれで海外ミステリ好き(注:シャーロキアンではない)だった祖父は
    私のルパン傾倒ぶりをみて、
    「ルパンは推理小説ではないからなあ」などと言っておりました!
    その横で祖母が
    「でも、格好いいわよね!ルパンは!」と口添えしてくれていたのも
    懐かしい思い出ですww

  15. Jun Shino2020-06-01 12:48

    ほー、そうなんですね。

    8.1.3とか推理小説っぽいですけどね。

    ホームズだって論理的でないとこいっぱいあるけど笑。
    だってあれは推理小説ではなく物語だよね、とかだいぶ言われてますよ。
    私もその通りだと思いますけど。。

  16. かもめ通信2020-06-01 13:13

    ふっ。
    たとえ相手が大好きな祖父であっても
    私のルパンへの熱い想いを断ち切らせることはできなかったわけですがww

  17. oldman2020-06-02 08:17

    お祖父様の言うとおり、僕もルパンは推理小説というより冒険小説の色合いが強い感じがします。

    それともう一点、これは僕の感覚ですがルルーもルブランもシムノンもシャプリソもどちらかというと苦手なんですね。
    それで「その女アレックス」は評判は聞いていたんですが、☝️を出すのを躊躇っていました。
    ルメートルは面白かったので、「食わず嫌いだったかな?」とも反省はしています。
    ただ、冒険小説はユーゴーやデュマ、バルザックなどは面白く読めるので、フランス嫌いでは無いとは思っているんですが……

    ルブランが評判の高かったホームズを自分の小説に登場させましたが、ドイルから「使用しないで……」との手紙を貰ったという話があります。

    その後ルブランはSherlock Holmesのアナグラムで、Herlock Sholmès(エルロック・ショルメ)を登場させますが、あまりパッとしない状態です。

  18. oldman2020-06-02 08:18

    更に「奇巌城」では、ショルメがルパンの妻を誤って射殺してしまうという事故を起こし、その辺もシャーロッキアンが嫌がる理由かもしれません。

    なんにしろルパン対ホームズの闘いはこれからも続くんでしょう。

  19. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『シャーロック・ホームズ傑作選 (集英社文庫)』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ