幼なじみの森野護と平石徹子との半生とその一生を描いた作品です。
それだけですと、どのよな物語かわからないでしょうが、「護」視点で語られる「フラット」と、徹子が語る「レリーフ」とで構成されていることからわかるように、徹子視点がある種の「解答編」となっています。「日常の謎」から出発した著者ですが、今回は「人生の謎」に挑戦したといってもよいかもしれません。
護視点の「フラット」を読んでいる限りでは、不器用な男の子とちょっと変わった女の子の幼なじみの二人の成長の物語を描いたジュブイナルかと感じてしまいましたが、そこは加納朋子作品、ただではおわりません。
「フラット」では二人の丁寧な半生が描かれます。近所同士のつきあいからはじまり、小学生から中学生生活、そして高校受験からはじまる別々の学生生活、ちょっとしたグループ交際、成人式から就職生活へと「ふつうの幼なじみ」が綴られていきます。これだけでも十分に読むに耐える物語です。そんな前半部が「何かがある」と思わせておわったかと思ったら、「レリーフ」で物語が一気に反転されます。ミステリーであってファンタジー作品でもあるのです。
「ちょっと変わった女の子」の背景に、ある特殊な能力をもたせるあたりは、よくあるファンタジーものといえるかもしれません。しかし、その特殊な能力は必ずしも本人の自由にはならずに、彼女自身はそうは特別なことはできません。コミックのヒーロー&ヒロインのようには活躍はできないのです。それでも、彼女はこの特殊な能力による人生に抗うべく勇敢に戦い続けます。まさしく、彼女が小さいころに出会った「神様」が語ったように。「とても大変なのに、とてもがんばるのですね。あなたは本当に素晴らしい。・・・」
これがふつうのファンタジーであれば、いろいろあったとしても特殊な能力により最後には問題が解決されてしまうことでしょう。また、アメリカンコミックのヒーローものであれば、同じような能力をもった仲間が解決に力を合わせてくれることでしょう。しかし、彼女の前に現れ救うのは、幼なじみの森野護のような彼女の人生で出会ってきた「ふつうの人々」なのです。
人生で困難に見舞われると、特殊な能力や幸運を期待してしまうことが少なくないです。しかし、特殊な能力や希少な幸運などは、おそらくはないことでしょう。身の回りの人々や彼らとの出会いでしか人生は存在しえないのだということを、あらためて感じさせてくれる、そんな作品なのです。
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