ピアノは10年以上習っていたし、小さなコンクールの1つや2つは出場したこともある。クラシック音楽はまあまあ好きだ。しかし、この本に登場する人物の誰かに自身を投影できるほど、才能もなければ真剣にピアノに取り組んだこともない。それでも、第1次予選から本選まで、心がほっこり温まったり、ぎゅっと締め付けられたり、あるときは登場人物の誰か、またあるときはコンクールの観客の気持ちになりながら、一気に読み進めた。
この本に登場するコンクール出場者は皆、天才だ。主要な4人の中では苦労人の印象が強い明石だって、大きな才能の持ち主である。しかし、天才だからといって悩みや苦労がないわけではない。一人一人に様々な人生経験、積み重ねてきた努力、曲の向こう側を想像する力があり、それぞれの世界の捉え方には奥行きがある。彼らに自身を重ねることのできない私も、彼らの演奏によって表現される世界の美しさや儚さ、厳しさ、強さを共有することはできるのだ。
クラシック音楽に興味のない方も一度読んでみて、この本の、彼らの演奏の世界観を感じてみてほしい。
私が好きな場面は、第1次予選通過後の明石が通過を示す花の付いた自分の写真と一緒に自撮りをしようと試行錯誤する場面と、第3次予選での亜夜の演奏の場面だ。また、実際に演奏されている曲を聴きながら読むのもおすすめだ。
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