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星落秋風五丈原
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そこに愛はありまくる!フランス版「ひとつ屋根の下」のあんちゃん奮闘す
 パリのデパートに勤めるバンジャマン・マロセーヌの仕事は苦情処理係。口八丁手八丁でどれだけうまく客の苦情を捌いて見せるのかと思いきや、客の前で上司に叱られ派手に泣く生贄の山羊を演じることで、客の怒りを逸らしていた。ところがデパートで謎の連続爆破事件が起こり、疑いの目が向けられたマロセーヌは捜査に乗り出す。

恋をしては子供を産み、家に置いて新しい恋に踏み出すママンの代わりに、父親違いの弟妹5人、ついでに下水道からやってきたみたいなすさまじい臭いの犬ジュリエスの面倒を見ているマロセーヌは。90年代の有名ドラマの台詞「そこに愛はあるのかい?」に答えるまでもなく、愛に溢れている。徹底した個人主義というイメージが強いフランスにしては、かなり日本人的なキャラクターだ。

 兄弟や職場の同僚など、マロセーヌの周囲も超個性的で自己主張が激しく、この辺りは逆にフランス人っぽい。デパートでなぞの小爺(おじいと読む 複数形:この当て字秀逸!)を侍らせているゲイのテオ、マロセーヌにパワハラしまくる軍人あがりの上司レーマン、一人ハードボイルドな空気を醸し出している夜警のストジル、事なかれ主義のデパートのオーナー・サンクレール、デパートで万引きしていた所をマロセーヌに救われたグラマラスな何人目かの“ジュリア叔母さん”、「妊娠したけど同居人が気に入らないから爆弾でぶっ飛ばす」と言い出す看護師の妹ルーナ、ママンから“おおちびさん”と呼ばれるマロセーヌ(28歳だよ)に対しておちびさんと呼ばれる名なしの弟、「この世の総ては星の定めに基づいている」と信じている妹テレーズ、中学生にして既に過激なテロリストの弟ジェレミー、マロセーヌと近親相姦に走りそうな妹クララ、等々。映画にするとしたら、いずれのキャラも濃いため、俳優を探すのが大変だ。

 ともするとお騒がせキャラに振り回されて見失いそうになるが、しっかりミステリもやっている。そもそも主人公が疑われるシチュエーションはミステリ第一作でもよく使われる設定だ。爆発現場の描写などは結構残酷な箇所もあるので、この描写を薄めるために、濃いキャラ達のエピソードが必要だったのかもしれない。続編『カービン銃の妖精』もやはりミステリなので、やはりミステリはシリーズを支える柱の一つであるようだ。
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2323 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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