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ぽんきち
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ひとりぼっちの小ぎつね。取り返しのつかない悲劇。
新美南吉(1913-1943)の代表作の1つ。
国語教科書の定番である。

物語は「村のおじいさんから聞いた」という体裁である。まだお殿様のいたころというから、舞台は江戸の終盤頃だろうか。
村の近くの山の中に、1匹のきつねが住んでいる。名前は「ごん」。ひとりぼっちの小ぎつねである。ごんは時々村に出てきてはいたずらをする。村人からすれば困りものである。
ある時、ごんは村の兵十が魚を取っているところを見つける。ごんはいたずらして、兵十が取ってびくに入れた魚を次々と逃がしてしまう。最後のうなぎと奮闘しているところを兵十に見つかり、ごんは這う這うの体で逃げる。
それからしばらくして、ごんは村でおとむらいがあるのを知る。ひがん花の咲く中、野辺の送りを見守って、ごんはそれが兵十のおっ母であったのを知る。
ああ、あのうなぎは兵十がおっ母に食べさせようとしたものだったのか。
そして、あんないたずらをしなければよかった、と後悔するのだ。

ひとりぼっちの小ぎつね。ひとりぼっちになった兵十。
ごんは兵十にせっせと栗やキノコを運んでやるようになる。
同情とも友情ともつかない、どこか不器用なその思いは、兵十に届くようで届かない。
そして最後にもう1つ、取り返しのつかない悲劇が起こる。

悲しいお話である。やるせないお話である。
この後、兵十はどうしたろう。
土手に、赤いひがん花がゆれる。


*よく知られているのは「ごんぎつね」の表記の方だと思いますが、青空文庫(初出は「赤い鳥」、底本は岩波文庫版)では「狐」の表記になっています。常用漢字ではないため、教科書では「きつね」の表記に変更されて、そちらが広まったものでしょうかね。南吉の草稿では「権狐」だったようです。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1826 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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この書評へのコメント

  1. noel2021-01-22 11:57

    書評が巧すぎて、こちらのほうを先に読みたくなりました。取り返しのつかない悲劇がなんなのか、とても気になります。

  2. ぽんきち2021-01-22 12:52

    ありがとうございます。
    短いのですぐ読めます~。

  3. noel2021-01-22 16:29

    ほんとにすぐ読めました! でも、とても深い小説でした。拙評も書いてしまいました!

  4. No Image

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